企業経営
日本型コーポレート・ガバナンスの確立に向けて

2014年4月30日

  • コンサルティング・ソリューション第一部 主任コンサルタント 深澤 寛晴

今年も株主総会の季節がやってきた。3月決算の企業の担当者は徐々に準備を始める頃だろう。機関投資家による議決権行使が定着した今日、株主総会で問われるのはコーポレート・ガバナンス(CG)であり、最も注目されるのが社外取締役だ。昨年6月にトヨタ自動車、今年3月にはキヤノンが社外取締役の設置に踏み切った。今年6月には新日鉄住金も社外取締役の選任議案を上程する方針だ。3社とも従前は社外取締役を設置しておらず、経営トップの選任議案への賛成率が大きく低下していた。社外取締役の設置後、トヨタ自動車・キヤノンともに賛成率は大きく上昇している(前者は89.81%から94.30%、後者は72.21%から90.08%)から、機関投資家の反応は上々と言える。

機関投資家の反応は良いに越したことはないが、社外取締役の設置自体はCG向上の手段であって目的ではない。CGの根幹を担う取締役会について、多くの外国人機関投資家が理想とするのは社外の独立した取締役が大半を占めるアングロ・サクソン型だ。経営のプロと呼ばれる外部人材を経営トップに起用することが珍しくない米国等では馴染みやすいシステムだが、社内人材が昇格して経営トップの座に就くのが通常の日本企業の視点からは違和感があるのも否めない。アングロ・サクソン型と一線を画した日本型CG(特に取締役会)の確立を求める声が出るのも自然と言える。

日本型CG確立のために何をするべきか。ポイントは、①長期にわたる持続可能な企業価値の向上に資することと、②①について株主(特に機関投資家)の理解を得ることだ。製品の競争力や長期的な株価上昇率で日本企業が欧米企業を凌駕していた80年代であれば、現状の日本型CGが持続的な企業価値の向上に資するとの主張は一定の説得力を持っただろう。しかし、90年代以降の状況を考慮すると、同様の主張で欧米の機関投資家の理解を得るのは困難と言わざるを得ない。現状をベースに「変えざるを得ない部分だけを変える」姿勢では不十分であり、「変えた方が良い部分は全て変える」姿勢で臨むべきと言えよう。

最後に日本型CGは発展途上のテーマであることを指摘したい。コンセンサスが十分に形成されていないため、最初から理想形を議論すると神学論争に陥る可能性がある。まずは関係者で現状認識を共有することから始めるべきだろう。具体的には、主に機関投資家からの要求、事業環境と経営戦略、さらにこれらを踏まえた現状の取締役会の課題、といったテーマが挙げられる。現状を踏まえ、改善策についての仮設構築と検証を繰り返す中で、日本型CGの理想形が見えてくるのではないだろうか。

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