企業経営
「中期経営計画」の策定で忘れがちなこと

2014年2月5日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 主任コンサルタント 廣川 明子

昨今、中期経営計画を策定し公表する上場企業は増えつつある。弊社で策定のご支援をする機会もあるが、そのプロセスにおいて忘れられがちなのは「人的資源」に関する議論である。事業にかかる内部環境分析を行っても「人的資源」の分析は二の次、経営資源の配分を検討しても「人的資源」の配分や調達の議論は置き去りにされてしまう。

中期経営計画を実行するのは言うまでもなく社員であり、特に事業を支える中核人材を育てるには少なくとも10年の期間を要する。不足が叫ばれて久しい「グローバル人材」は好例であろう。人材不足が中期経営計画の実行の阻害要因になりかねないが、新卒採用で内部育成する方針の企業ですら中期的な視点に立った「人的資源」に関する計画がないことが多いと感じる。

「人的資源を最大化」させて中期経営計画の実行を支えるためには、少なくとも中期経営計画と同じスパンもしくはそれ以上の長期的な視点での議論は不可欠である。以下に中長期的な「人的資源」の検討に資する手法のひとつ「人材ポートフォリオ(人的資源の見える化)」をご紹介したい。

例では、横軸に「囲い込み度」、縦軸に「報酬の付加価値」を置いて人材(スキル)をプロットしている。「囲い込み度」は外部調達の難易度、代替手段の有無、内部育成でしか習得できないスキルなどでレベル分けをする。「報酬の付加価値」は事業への貢献度、費用の大きさなどを見る。中期経営計画の策定プロセスにおいては、事業ポートフォリオや戦略がまとまった段階で作成する。

人材ポートフィリオ

「人材ポートフォリオ」はどのような人材が不足しているかが可視化されるため、課題を共有しやすいという利点がある。また、正社員間の報酬格差、非正規社員化、外部委託化など人件費配分の方向性の議論にも資する。

活用方法としては、まず現在の「人材ポートフォリオ」と中期経営計画の実行に必要な「人材ポートフォリオ」を策定する。次いで、両者のギャップを埋める方法を「人事中期計画(以下、人事中計)」としてまとめる。人事中計には、採用・配置・育成および人事制度(処遇全般・雇用形態など)さらには運用も包括的に盛り込むことが望まれる。

また、人事中計の検討においては、中長期的な「人件費」や「労働分配率(※1)」の推移などの指標も併せて見ていきたい。人件費水準が一定であっても粗利益の低下が見込まれれば労働分配率が上昇するため、人件費抑制が求められることになる。中長期的に分析することで早期の対策が取れ、不利益を伴わない緩やかな移行方法も選択しうる。

2014年度に現・中期経営計画を終える企業では、間もなく次期・中期経営計画の策定を開始される頃であろう。その際にはぜひとも「人的資源」に係る議論をお忘れなきようご留意いただきたい。また、中期経営計画が実施中であっても、中期経営計画がない企業であっても中長期的な人的資源の検討は重要である。本日ご紹介した手法が一助となれば幸いである。

(※1)労働分配率=総額人件費÷付加価値額×100%が基本である。付加価値額の算出方法はいくつかあるが、粗利益を採ることで概算値を出すことも可能である。

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