企業経営
見落としがちなグローバル人材育成の論点:戦略推進の強固な基盤とするために

2013年9月4日

  • 経営コンサルティング部 主任コンサルタント 安井 明彦

事業戦略における新興国ビジネスの重要性の高まりを受け、「グローバル人材の育成」を経営課題の柱の一つに掲げる企業が増えている。しかし、実際に経営陣の方に話を伺うと、その内容は英語などの語学力や、MBA的なスキルの習得を想定していることが多い。語学やスキルは手段やツールとしては確かに必要だが、「グローバル人材の育成」は語学やスキルだけの問題なのだろうか?

「グローバル化」と似た言葉に「国際化」があるが、そもそも両者の違いとは何だろうか?様々な考え方があるだろうが、筆者は以下の様に考えている。「国際化」には日本製品を海外市場に輸出する等、日本起点の発想がそのベースにある。一方、「グローバル化」のグローバルとは地球のことであり、いわば全体を俯瞰する視点が求められる。言い換えれば、「グローバル化」とはボーダレス化であり、「グローバル化」された環境においては、多様な人材と共に、様々な枠や境界を超えて自らアクションを起こし、付加価値を創出していくことが求められるのである。

この考え方に立つと、それまでには気付かなかった様々なものが見えてくる。例えば、「グローバル化」すべき対象。本社内の他部門や他事業との間、組織内の階層の間など、付加価値を創出するために超えるべき枠や境界は社内の身近なところにもある。また、こうしたものを超えて自らアクションを起こすためには、語学やスキル以前に、行動を起こすための社員の意識改革が必要となるケースも多い。一見海外とは無関係なこうした取組みが、本来の「グローバル化」を支える強固な基盤となるのである。

また、「グローバル人材の育成」について、単に語学力などのツールや手段に走ってしまう結果、「何ができる人材がどこにどれ位必要か」という社内での議論が不十分なケースも多い。「グローバル人材」も企業に必要な人的リソースであることに変わりはなく、必要リソースの検討は、事業の方向性や組織の現状と一体で検討するべきである。「うちは従業員数も多くないので、手間をかけて検討しなくても、候補社員のことは頭の中に入っている」という企業があるが、実はこうした“暗黙知”への依存こそ、曖昧な情報共有ができる枠内に思考や行動の制約を課しているという意味で、自社の「グローバル化」を阻害する温床になることに気付くべきである。多様な人材を登用し納得して仕事をしてもらうことが「グローバル化」のベースとなるが、そのためには手間を惜しまず“暗黙知”の形式知化(=「見える」化)を進め、多様な人材がそれを前提に動けるようにすることである。こうした取組みは、売上規模の大小や海外進出ステージ等に関係なく、全ての企業が検討するべきことではないだろうか。

このように見ると、「グローバル人材の育成」とは言っても、実は「人材マネジメントとそのための組織体制整備」と広く捉えて考えるべきことがわかる。手段やツールのみならず、より多面的な視点でソリューションを検討することで、本質的な課題解決に道を開くことになるのである。

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