企業経営
人事制度改定のタイミング?!

2012年12月5日

  • コンサルティング・ソリューション第三部 小林 英一

あなたの会社で人事制度の大きな改定が、最後に実施されたのはいつであろうか。つい最近見直しを実施したという会社もあれば、長い間全く手を付けていないという会社もあるだろう。組織運営の重要なプラットフォームとなる人事制度の整備は、経営にとって大きな課題の一つである。本稿では、いくつか代表的なケースに触れながら、企業が人事制度を見直すタイミング、「きっかけ」について考えてみたい。

法改正

労働関連法令の制定または改正は、企業における人事制度改定のきっかけの一つになる。法的要請であるため、各企業は必ず対応しなくてはならない。時間外手当の割増率改定や育児・介護休業法の改正などが良い例であろう。法改正への対応においては、各法令が定める範囲における一定基準をクリアすることに主眼がおかれるため、人事制度全般というよりは該当する限られた部分の改定にとどまることが多い(もちろん、部分的な改定にとどまらず、法改正を機により本質的な課題として捉え、改定が広範囲に及ぶ場合もある)。

流行(ブーム)

経営環境の変化などにより特定の制度やパラダイムが比較的多数の企業で導入され、それがさらに多くの企業における採用のきっかけとなるケースである。例えば、1990年代後半に見られた成果主義の導入などがあげられる。バブル崩壊後の厳しい経営環境の中、比較的短期間の間に非常に多くの企業で成果主義型の人事制度が導入された。導入企業の中には、自社の経営戦略・方針との適合をしっかりと確認して導入した企業がある一方で、それらを深く検討することなく、ただ単に他の多くの企業で導入されているから良い制度に違いない、または、世間に乗り遅れまいとする等の理由が主で導入を決めた企業も少なくなかったのではなかろうか。いずれにしろ、一つの流行、ブームが人事制度改定のきっかけになることもある。

組織統合

合併など複数の異なる組織が一つになる場合も、制度改定のきっかけとなる。一つの会社の中に複数の人事制度をそのままの状態で存続させることも可能であるが、組織融合の促進や管理上の業務負荷を考えると、一つの制度に統合するのが自然であろう。制度統合にあたっては、通常、まず対象となるそれぞれの人事制度の把握・棚卸しが行われる。そこでは、そもそも制度統合という以前に、従前の人事制度に様々な不備が存在することが改めて認識されるケースも少なくない。そしてまた、組織統合後の新しい経営を見据えた制度の構築も望まれる。当然、それらの点に注意しながら統合新制度を構築するわけであるが、その意味では、組織統合は、複数人事制度の単なる統合にとどまらず、人事制度改定のきっかけの一つといえるであろう。

経営計画の策定

中期経営計画等の策定のタイミングで人事制度が見直されることもよく見受けられる。これには、二つのケースが想定される。一つ目は、これまで人事制度を全く振り返ってこなかった、または、課題は認識していたが対応をしてこなかった状況で、経営計画策定を機に見直そうとするものである。二つ目は、新たに策定する経営計画が、これまでの経営から大きく別方向に舵を切る場合に、同計画の遂行をサポートする新たな人事制度の整備が求められる場合である。両者の区別が必ずしも明確ではなく、両要素を含む場合もあるだろう。

経営者の交代

経営者の交代もまた、大きなきっかけの一つとしてあげられる。大企業等でみられる定期的な代替わり交代、創業者等からの世代交代、買収による経営陣の大幅刷新など様々なケースが考えられる。これまでに築き上げられた資産を最大限に活かしつつも、新経営者が改めて将来を展望し、自身の考えを経営に反映させていく。そのようにして新たに策定された経営戦略・方針を着実に実行するためには、それらを社内にしっかりと浸透させる必要がある。そのための一つの手段として、策定した経営戦略・方針に適合した人事制度に改定しようとするものである。


以上、人事制度改定のきっかけについて代表的なケースを見てきたが、問題は、長期にわたり(法改正を除いて)前掲のようなきっかけが全くない場合、または、きっかけはあってもそれら機会を活かしていない場合である。そのような場合、人事制度は従前の状態のままという懸念が生じる。もちろん、人事制度は常に変化しなければいけないということでは決してないが、少なくとも現行制度が有効に機能しているかどうかの検証は定期的に行うべきであろう。
人事機能・スタッフが充実している大企業などを中心に、上記のようなきっかけがなくても常日頃から絶えず人事制度の改善を行っている企業もあるだろうが、中にはその検証さえも行わず、長年放置されたままの企業も存在するのではなかろうか。

本来、人事制度が有効に機能するためには、経営戦略・方針と整合的であるべきだが、不整合を起こしていても明日の経営に直ちに致命的な影響を及ぼすものではない。そのため、人事制度に関する課題に気付いていたとしても、他の喫緊の経営課題等により脇に追いやられ、ついつい対応が先延ばしになってしまいがちである。また、中には、そもそも人事制度が抱えている課題を認識していない企業もあるかもしれない。
いずれの場合においても、この人事制度の機能不全は組織、経営を徐々に蝕んでいく。経営が望む行動と社員の実際の行動とが大きく乖離する、社員のモチベーションが大きくダウンしパフォーマンスも低下する、期待していた若手の退職がとまらない等の問題がやがて顕在化してくる。

筆者は人事関連のコンサルティングを手掛け、様々な会社の方にお会いする機会があるが、自社の人事制度に関して決して小さくはない課題を認識し、高い問題意識を持っている人事担当者の方は非常に多いように思う。しかし、同時に、経営陣から指示がないので同課題に能動的に対応するのは難しいという声もよく耳にする。人事制度という非常にセンシティブな領域だけに、自らの立場で経営陣に対して積極的に問題提起、提案をするのは憚られるということであろう。
その意味で、経営者の方は、現在の人事制度が自社の経営戦略・方針に適合してきちんと機能しているのかどうかを今一度改めて検証するように、人事部門に指示を出されてみては如何であろうか。「待ってました!!」との反応が期待できるかもしれない。

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