企業経営
中小企業における"知的資産"のマネジメント ~事業承継や事業再生で必要性が高まる~

2012年10月24日

  • 経営コンサルティング部 鈴木 紀博
最近、中小企業に対する経営支援の場で「知的資産」が語られる機会が多くなってきた。ここで言う「知的資産」とは、特許権や著作権など一般に「知的財産」とか「知財」と呼ばれる狭義の概念ではなく、経営における様々なノウハウ、ブランド、営業力、信用力、組織力、経営理念など企業が保有する「無形の経営資源(intangible assets)」を含む広義の概念である。

中小企業にとっての「知的資産」
例えば中小企業の事業承継を考える際には、[1]誰に継がせるかという「人の承継」、[2]保有する資産をどのように残すかという「資産の承継」、そして、[3]企業のマネジメントをどのように引き継ぐかという「経営の承継」という3つの観点から考える必要がある。中でも、上記の「知的資産」は目に見えにくいが故に「経営の承継」には困難が伴う。しかし、中小企業の経営の後継者として親族以外の者(従業員や社外の第三者)が選ばれる割合が年々高まっている状況の中で、「知的資産」を「見える化」することの重要性は年々高まっている。

「知的資産経営」に対する支援
このような状況に対応するため、経済産業省が所管する独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では、中小企業に対する経営支援策の一環として、「知的資産経営」の支援を行っている。これは、会社の強みである「知的資産」を「見える化」して正しく認識し、それを活用することによって、業績の向上を図ろうとするものである。その内容は、[1]企業の内部環境(強みと弱み)の分析、[2]外部環境(機会と脅威)の分析、[3]将来ビジョンの明示、[4]価値創造のストーリーの構築、[5]経営の目標値の設定などから構成される。これらは主として大企業で従前から行われてきた「事業診断」や「経営計画策定」のフローに他ならない。中小企業も綿密な環境分析を通じて、自分たちの強みあるいは強みの源となる「知的資産」を明確に認識し、それに磨きをかけていくというシステマティックな対応が求められるようになってきたということである。

経営計画策定のフロー
経営計画策定のフロー


経営計画策定の意義
一般に、経営計画策定の意義として以下のことが挙げられる。
  • ビジョンの明示と共有
    経営の方向性を示すビジョンを明示し、それを社内で共有することにより、組織の構成員のベクトルを一致させる。
  • 経営資源の認識
    経営計画の策定プロセス自体が、自社固有の能力や経営資源、あるいは自社が置かれたポジションを冷静に認識する機会となる。
  • ステークホルダーとのコミュニケーション
    出来上がった経営計画は、顧客、取引先、金融機関、投資家、従業員など社内外のステークホルダーと共通の言語でコミュニケーションを図るためのツールとなる。結果として、企業に対する関係者の理解が向上し、信頼感が醸成される。

社外から理解される「知的資産」の必要性
中小企業においても、社外のステークホルダーとの関係強化がより重要となってきた。中小企業金融円滑化法が2013年3月に期限を迎えるため、今後は事業再生ファンドなどによる事業再生の機会が増加することが予想される。事業再生において出資するファンド側が最も注目するのが、投資対象とする企業のコアとなる強みあるいはそれを支える経営資源は何かという点である。資金、人員、経営者、販売チャネルなどは、再生の過程で新たに外部から調達して補うことが可能な場合もある。簡単には外部から調達できない「知的資産」は何か、そして他社が簡単には模倣できない「知的資産」は何なのかが真剣に問われるのである。自社の強みを「見える化」して明確に認識し、それに一層の磨きをかけ、さらにそれを外部の第三者に対してわかりやすく説明できるようにするというプロセスは、これからの中小企業にとってますます重要となる。

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