企業経営
セゾン情報の買収防衛策が示唆するもの

2012年6月22日

  • コンサルティング・ソリューション第一部 藤島 裕三
  • コンサルティング・ソリューション第一部 深澤 寛晴

6月12日に開催されたセゾン情報システムズ(以下、セゾン情報)の定時株主総会に上程された議案が注目を集めている。この議案は同社の買収防衛策に則ったもので、同社株式の27.7%を保有するエフィッシモ・キャピタル・マネジメント(以下、エフィッシモ)に対して大規模買付行為の中止を要請することの是非を問うものだ。エフィッシモは2011年9月に同社株式を33%まで買い付ける(=大規模買付行為)意向を表明しており、その際には同社の買収防衛策に定められたルールを遵守するとしていた。同議案は同総会で可決されたため、セゾン情報は同日中にエフィッシモに対して本大規模買付行為の中止を要請している。

エフィッシモはシンガポールを拠点とする投資ファンドで、代表者はMACアセットマネジメント(通称:村上ファンド)の元・ファンドマネジャーという経歴の持ち主。少数の企業に集中投資する方針で、通常は10%以上の株式を保有すること、経営者と対立する場合には株主権の行使(買収提案・株主提案・経営者に対する訴訟等)を辞さないこと、等が特徴として挙げられる。セゾン情報については、2008年10月に6.50%を保有することを公表した後、買い増しを進め10年12月には25.97%に達している。これに対しセゾン情報は同月中に、28%を発動トリガーとする買収防衛策の導入を取締役会で決議(翌11年6月の定時株主総会で更新議案を可決)した。

本件が注目されているのは、ブルドックソース事件以来、買収防衛策が司法の場に持ち込まれる二例目の事案となる可能性があるためだ。エフィッシモが中止要請に反して大規模買付を強行すれば、セゾン情報が買収防衛策に則って対抗措置(新株予約権の割り当て)を発動する可能性が高い。これに対しエフィッシモが裁判所に対して差し止め請求を行う、といった展開が考えられる。

司法判断を想定した場合、ブルドックソース事件同様、株主総会で株主意思を確認し支持を得ている点は、セゾン情報にとって有利な材料となろう。本件に関しては、筆頭株主のクレディセゾン及びエフィッシモを除いた、少数株主から過半数の賛成が得られるかがポイントとなる。臨時報告書等によると、賛成(クレディセゾンを除く)は28,635個と88.5%を占めた一方、反対・棄権(エフィッシモを除く)は3,706個と11.5%にとどまったから、圧倒的多数が会社側を支持したと言える。

ただし、セゾン情報の上位10株主を見ると、持株会や(クレディセゾンを除く)企業・銀行が19,590個の議決権を保有している。これを安定株主と見なし賛成したと仮定すると、非安定株主の賛成数は9,045個に過ぎない。11位以下にも安定株主がいる可能性があるから、非安定株主に限定すると圧倒的多数の支持を得たとは言い難いのが実態だ。一方、エフィッシモを除く外国人が保有する議決権は2,667個に過ぎず、国内の機関・個人投資家の一部も反対に回ったようだ。また、エフィッシモによるとISS、グラスルイス、及び日本プロクシーガバナンス研究所といった議決権行使助言会社は反対推奨したとされており、機関投資家の多くは反対票を投じたと考えられる。

一方、エフィッシモが一定程度の買付を進めた段階になって、セゾン情報が買収防衛策を導入(いわゆる「有事導入」)した点はエフィッシモにとって有利な材料となる可能性がある(※1)。2005年に経済産業省と法務省が発表した買収防衛策指針では「事前開示の原則」として、「買収防衛策は、株主や投資家、買収者などの予見可能性を高め、株主の適正な選択の機会を確保するために(中略)開示するべきである」としている。

また同指針では「必要性・相当性確保の原則」として「企業価値に対する脅威が存在すると合理的に認識した上で、当該脅威に対して過剰でない相当な内容の防衛策を発動すべき」としている点も、論点になりそうだ。ブルドックソース事件では買収者であるスティール・パートナーズが全株取得を目指したのに対し、エフィッシモの提案は33%までの買い付けを目指すにとどまる。今回のエフィッシモの大規模買付行為が対抗措置の発動に相当するほどの脅威かどうか、については議論の分かれるところとなろう。

未だ帰趨は決していないが、本件は買収防衛策に対する非安定株主の視線が厳しいこと、買収防衛策が法的に微妙な問題をはらんでいること、を改めて印象付けるケースと言える。持ち合い解消を受け、機関投資家を中心とする非安定株主が増加傾向にある中、買収防衛策への過度な依存は望ましい姿とは言い難い。非安定株主と良好な関係を築くことが最善の買収防衛であることは指摘するまでもないだろう。「第192回 ポスト持合い時代への対応」で指摘している通り、IRやコーポレート・ガバナンス等を通じた資本市場との関係の再構築を進めていくことが求められていると言える。

(※1)ただし、ブルドックソース事件の場合も有事導入だったから、決定的な材料とはならないとも考えられる。

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