企業経営
新エネルギービジネス成功の鍵はビジネスモデルの変革

2012年2月8日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 水上 貴史
再生可能エネルギーを中心とする新エネルギービジネスへの期待が高まってきた。国内では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入が決定されて以来、発電事業やそれに関連する様々な事業への機運が盛り上がっている。また、欧州や米国などでもCO2規制が強化される中、大規模な需要先である自動車や航空機などの輸送機器で、バイオ燃料や水素燃料などの新しい燃料を積極的に利用しようという動きが強まっている。
新エネルギービジネスの成長や拡大を期待して、多くの日本企業が同分野への参入に取り組んでいる。これらの企業の戦略を分析すると、“製品中心からソリューション中心へ”“技術シーズ重視から市場ニーズ重視へ”といったビジネスモデルの変革の流れが読みとれる。
一例を挙げると、再生可能エネルギーを用いた発電設備のメーカーがその運用事業に進出したり、先進的な電力管理を手掛けたりしているケースがある。例えば、太陽光パネルを製造するシャープは、イタリアの電力事業大手のエネル社と合弁会社を設立し、海外で太陽光発電設備の製造からその発電所の運用まで手掛けている(※1)。また、各種電力設備を製造する東芝は、スマートメーター最大手のスイスのランディス・ギア社を買収し、電力管理も含めたスマートグリッドとしてのトータルソリューションの提供を図っている(※2)
別の例として、新燃料の分野では、従来、燃料を消費する製品を販売していた企業が、燃料自体の製造に進出しているケースがある。例えば、航空・船舶等の各種エンジン製造を行うIHIは、エコシップや航空機用エコエンジンなどの開発を行う一方で、セルロースを介したバイオ燃料や藻類バイオ燃料の開発も行っている(※3)。自動車メーカーのトヨタ自動車でも、遺伝子組換え技術を駆使し、セルロースを介したバイオ燃料の開発を行っている(※4)。また、自動車メーカーのホンダは、燃料電池自動車(水素自動車)の開発にあわせて、太陽光を利用して水素を製造するソーラー水素ステーションの開発も行っている(※5)
新エネルギービジネスを展開するうえでビジネスモデルを上手く構築するには、次のような点が重要になるだろう。
一点目は“業界およびマーケットの予測を十分に立てること”である。新エネルギーに関する政策には、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のような供給側に影響を与える政策、CO2規制のような需要側に影響を与える政策、補助金制度のようなその両方に影響を与える政策があり、供給・需要の両面から政策動向をウォッチしていく必要がある。また、技術開発に関してもまだ発展途上にあり、再生可能エネルギーでいえば発電効率の上昇、バイオ燃料や水素燃料でいえば製造コストの低下が、業界やマーケットに大きな影響をもたらすといえる。これらを踏まえて、新エネルギービジネスの市場がどのように形成されていくのか、業界構造がどのようになるのか仮説を立てることが求められる。
二点目は“バリューチェーンの分析・予測と、自社のポジショニングの明確化”である。例えば、電力を基準にすれば「発電~電力貯蔵~電力利用」、電力機器を基準にすれば「開発~製造~運用」のバリューチェーンに関し、上述した“製品中心からソリューション中心へ”“技術シーズ重視から市場ニーズ重視へ”という観点で、視野を広げて全体を眺めてみる必要がある。そのうえで、高い付加価値を生むのはどこか、市場ニーズがあるのはどこか、自社の強みを活かせるのはどこか、といったことを考え、自社のポジショニングを明確化していくことが求められる。
その際、自前にこだわらず、ビジネスパートナーの積極的な採用を考慮することも考えられよう。ベンチャーや異業種企業など、技術や知識を補完する有力なパートナーを見つけることで、ビジネス可能領域の幅を広げることができる。また、技術面や商流面などの課題を、外部で素早く解決させられる可能性がある。
それなりに時間を費やしてこれらの検討を重ねたとしても、最終的な結論が最適解かどうかは判断に迷うものである。意思決定や判断にスピードが要求されるなかで、外部の専門家の知見を活用するなどの複眼的な思考により、新規事業の開発やバリューチェーンの構築を図ることが望まれる。
(※1)シャープ 2010年8月2日ニュースリリース(イタリアでの「薄膜太陽電池の生産事業」および欧州・中東・アフリカでの「太陽光独立発電事業」に関する合弁会社設立について)
(※2)東芝 2011年5月19日ニュースリリース(ランディス・ギア社の株式取得について)
(※3) IHI 2011年7月7日プレスリリース(藻類バイオ燃料の研究開発合同会社の設立)
(※4)トヨタ自動車 2011年10月3日ニュースリリース(トヨタ自動車、バイオ・緑化事業の取り組みを公表)
(※5)本田技研工業 2011年4月20日ニュースリリース(埼玉県庁敷地内へのソーラー水素ステーション設置計画を公表)

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