企業経営
グローバル経営

2011年3月16日

  • 企業経営コンサルティング部 横溝 聰史

豊富な労働力と安価な人件費を求めて、日本企業は製造拠点として中国等に多くの製造子会社を設立した。近年では日本市場の成長が鈍化する一方で成長著しい中国やインド等の新興国の現地子会社に販売機能を付加して事業拡大を図っている。製造業以外でも、新興国市場に販売子会社等を設立し、事業拡大を計画している企業が増えている。

欧米のグローバル企業も同様に新興国に販売の活路を求めている。まさにグローバルな規模で企業活動が行われるようになってきており、その競争もし烈になってきている。

そのような経営環境の中、日本企業は以下のような様々な課題を抱えている。

日本企業のグローバル経営上の主な課題

日本企業は、上記のような課題を克服し、適切に事業を運営・拡大していくために、マネジメントのグローバル化(=グローバル経営)が必要になってきている。

適切なグローバル経営の大きな枠組みとして以下のような事項が考えられる。これらの枠組みを適切に整備し、確立することにより企業価値の向上が望める。

グローバル経営の大きな枠組み

(1)グローバル経営理念・ビジョンの共有・浸透

グロ-バル経営の大きな枠組みとして、まず挙げられるのが“グローバル経営理念・ビジョンの共有・浸透”である。今後の企業の長期的な在り方を明確化するとともに、世界の各拠点の人材に経営理念・ビジョンを共有・浸透させることはグローバル経営の最初のステップであると言える。日本企業にとって、当然と言えるような理念であっても、海外の現地社員にとってはすぐに理解できないようなものも存在し、そのことがひいては円滑な事業・業務運営に支障をきたす可能性がある。

以上の事態を防ぐためには、研修等を通じて経営理念・ビジョンの背景、趣旨、重要性、必要性等を徹底的に海外現地社員に理解・浸透させることが重要である。このような取り組みにより、グローバルにグループ全体の一体感が高まり、経営のあるべき方向性が明確になり、事業・業務運営が円滑に行われるようになる。

(2)グローバル人事制度の整備

グローバルに経営理念・ビジョンの目的を達成しようとするためには、その任を担う人材が国境を越えて登用、交流、育成、評価、処遇される共通化・体系化された人事制度を整備する必要がある。

具体的には、経営理念やビジョンを実現させることができる“あるべき人材像”を描き、その人材に必要な能力・資格等の基準を設定し、それに基づき評価・処遇することが考えられる。

また、“あるべき人材像”に育てあげるための教育・育成制度も整備し、実施させることが必要である。更に、グロ-バルに人材を交流させるための出向制度の整備も必要になる。このような制度の整備により、企業はグローバルに人材を適材適所に配置し、処遇することが可能になり、企業内の活性化を促し、最終的にはグロ-バルに企業価値を向上させることができると言える。

(3)グローバルガバナンスの整備

日本の本社や子会社に対するガバナンスやリスクマネジメントの整備に比べ、海外子会社に対するガバナンスやリスクマネジメントの整備は遅れていると言える。

今後考えられる海外子会社の現地化や経営機能の拡充等を考慮し、海外子会社と本社の役割・権限の度合いを明確にし、規定化することが求められる。具体的には、本社・海外子会社間の職務権限や決裁プロセスの管理規程を整備・運用することが望まれる。

このような日本本社と海外子会社間の明確な権限付けや決裁プロセスの策定は、本社と海外子会社間の役割や権限のあるべき姿を見直すきっかけ作りや、業務の見直しにも繋がり、更には、明確化された一連のルールは人治経営から組織経営に変え、人事異動を容易にし、来るべき海外子会社の現地化も容易にするものと考えられる。

また、海外子会社においてのリスクマネジメントの整備もグローバルガバナンスにおいて欠くことができない取り組みであろう。特に、中国やインド等の新興国にある子会社のリスクマネジメントの整備は急務であると言える。このような新興国では市場の急速な拡大に伴い、海外子会社の事業も拡大傾向にあるが、日本とは異なる様々なリスクを抱えており、リスクマネジメントを整備せず放置して置くと、重大なリスクの発生が起きる可能性が非常に高くなるだろう。

以上のグローバル経営の大きな枠組みに対する整備は、グローバルな視点で行うことが求められ、価値観や制度の検討が必要となり、現制度の修正や新たな制度構築も必要となる場合もあり、多大な時間や労力を要し、業務上の負担になる可能性がある。

しかし、グローバルな事業・業務運営を将来的には円滑にし、企業価値の向上に繋がるものと考える。グロ-バルに拡大を図る日本企業にとってはもはや先送りできない重要な経営テーマであると言えるのではなかろうか。

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