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綺麗な街並みのブダペスト、美人の街ワルシャワ―中東欧見聞録―

2009年5月27日

  • ビジネス開発部 井本 沙織

私はこれまで、中央・東欧諸国の経済について投資家に説明する場合に、「ロシアと東欧諸国」あるいは「中東欧」との表現をよく使ってきた。あたかも旧共産圏諸国が一つの国であるかのように…

しかし先月末にロシア、ハンガリー、ポーランドへ出張して、中東欧は一つの国ではないことを明確に理解できたことが、私自身にとって大きな収穫だった。

「グローバル金融危機の打撃が大きくて、経済状況が悪い」。これが、最近の中東欧諸国について一般的に抱く感覚ではないだろうか。けれども、どの国の経済のどこが悪い、どの程度に悪いか、はっきりとしたイメージを持つ向きは少ない。そして今回の渡航と現地調査によって、それぞれの国の経済事情がくっきり見えるようになった。つまり、中東欧は国ごとにそれぞれ特色があって、経済規模、財政状況、景気対策等など様々な事情が異なるのだ。

中東欧の国々は、市場経済の成熟度、金融危機による影響の度合いなどで様相を異にするものの、共産党時代という共通の過去でつながり、ベルリン壁崩壊後はそれらの国々の経済ポテンシャルが投資家の注目と期待を集めてきた。ロシアの人口と比べて3分の1しかない、産油国でもないポーランドに対する直接投資が、ロシアに対する投資を上回っていた。昨年に終焉を迎えた好況期の最後まで、ロシアはポーランドに勝てなかった。そしてチェコにも…ちなみにチェコの人口は1千万人(ロシアは1億4千万人)を数えるに過ぎない。

これらの国の魅力はどこにあったのだろうか? 質が高い上に比較的安価な労働力、ヨーロッパ市場にとって都合の良い立地などがあげられる。そして、このニューエマージング・ヨーロッパの国々は、オールド・ヨーロッパ諸国とチームを組んで、地域を活性化させてきた。旧体制崩壊後の経済混乱を乗り越えながら、数多くの投資チャンスを提供し続けたわけである。しかし、オールド・ヨーロッパとの密接な関係について言えば、逆に今回の金融危機によって弱点が浮き彫りになったことも事実だ。景気の良い時の密接な関係は、景気悪化時における「依存度が高い」関係と呼ばれるように様変わりした。

共産党時代に抑制されていた購買欲が消費ブームに変わり、未発達の金融制度がクレジットの黄金時代を生むだろうと見通して、ヨーロッパの銀行はそれらの国に大きな期待を寄せて膨大な資金を注ぎ込んできた。その結果、ニュー・ヨーロッパ市場ではオールド・ヨーロッパの金融機関のプレゼンスが非常に大きく高まっていた。言い換えれば、中東欧諸国の殆どは、自国の金融制度を「人任せ」または「丸投げ」の状況に貶めていた。そしてヨーロッパの銀行が弱った今、海外資金へ依存する脆弱さがこれらの国にとって、アジア危機を思い出させるほどの不安感へと変貌した。

もっとも金融危機といえども、その深刻さは国によって違う。例えば、経済成長予測では、チェコが2009年▲3.5%、2010年0.1%、ハンガリーの同時期も▲5%、ゼロ%とあまり明るい見通しが立たない。一方でポーランドは2009年こそゼロ成長だが、来年2010年には0.8%と比較的明るい数字が予測されている(EBRD予測、2009年5月7日付け)。

私が先月末に行ったハンガリーとポーランドのマクロ経済データをみると、株式市場は上昇傾向にあり、一時数10%下落した自国通貨相場も元気を取り戻している。サバイバル経験を持つ旧共産圏諸国の立ち直りが早いと信じたい私だが、実際に信じて良いかどうかについては戸惑っていた。マクロ数値だけをいくら追っても、国の顔と性格がみえてこないからだ。どうしてハンガリーはIMFの力に頼らざるを得ないほど経済状況が悪化したのか、またポーランドは金融危機の影響が比較的軽微なのは真実なのか、などなど。しかし先月の渡航で私の戸惑いが氷解するのにどれほど時間はかからなかった。状況を本当に理解するには、現地の専門家に会うのはもちろんのこと、その土地を実際歩いたり、スーパーで夜食を買ったりして、できるだけ多くの人々と話すことが重要だ。「百聞は一見にしかず」は昔も今も変わらない!

モスクワ時代の大学の同級生は、ブルガリア、東ドイツ、モンゴル、チェコ、ベトナム、ハンガリー、キューバの留学生。彼らは勉強熱心で、ロシア人の私たちに負けないくらいロシア語も堪能であった。勉強も遊びも、いつも一緒だった。4月26日の日曜日、モスクワからブダペストへの飛行機のなかで、昔の楽しい思い出が鮮明に甦ってきた。

今回のブダペスト訪問は、私自身にとって2度目、10年ぶりの再会であった。おとぎ話に出てきそうなブダ城の雰囲気は、あっと言う間に春の花のような、ほのかに甘いお姫様の気分にさせてくれる…というわけでブダペストが大好きなのだが、私が現実に引き戻されたのは、閑散とした都心から程近いショッピングモールを覗いたとき。値段が高く、お客さんは殆どいないのだ。またブダペスト空港からホテルまでのタクシー運転手も、「私たちは物価だけはEU並みです。給料はEUよりずっと安い」という。これらの経験は、これまで抽象的イメージだった「金融危機の影響」をだいぶ立体的に理解するのに役立った。

その2日後に着いたワルシャワの雰囲気は、ブダペストとは大きく違っていた。買い物客で賑わっているデパートは、「経済は言われるほど悪くないよ」とアピールしているように見えた。ファッション雑誌のモデルたちが一気に外にでたかのように街中に、パリが顔負けの「洋服美人」で溢れていた。私は、ポーランドに対するEBRDの楽観的な見通しに、思わず頷かずにはいられなかった。

地域を一括りにせず各国個別の事情を踏まえることが、中東欧投資にとって如何に重要か…このことを幾度となく考えさせられる旅であった。

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