アジアンインサイト
(続)中国越境EC市場 データで語る最新動向

2017年11月16日

  • アジア事業開発グループ シニアコンサルタント 芦田 栄一郎

前稿(※1)では、中国の消費者がインターネット経由で海外の商品を直接購入する「越境EC(電子商取引)」に関して、その市場規模や越境EC経験者の割合、日・米・中各国間の取引規模、そして将来の越境EC市場規模等について概観した。今回は、引き続き経済産業省「平成28年度 電子商取引に関する市場調査」(※2)を参照しながら、「越境ECにおける売れ筋商品」等の詳細に立ち入ってみたい。
中国消費者が越境ECにおいて過去1年間に購入した商品は、「アパレル、靴、アクセサリー」と「化粧品」が並んで55%と回答する割合が最も高く(図表1参照)、これらの商品が中国越境ECの人気商品として定着していることがよく分かる。
次いで、第3位は「食品、飲料、アルコール」とする回答が多いが(44%)、このカテゴリは今後の売れ筋として成長が期待できる分野でもある。というのも、第一に食の安心・安全を求めて「海外の信頼できる業者から購入したい」というニーズが鮮明になりつつあるからである。また、中国では高齢化が進んできていることもあり、健康に関する関心も大きく高まり、健康関連食品の消費拡大が見込まれる事情もある。中国におけるコールドチェーンの充実化が進めば、購入できる食品・食材の選択肢はますます増え、基本的にこうした食料品関連消費は拡大しよう。特に所得の向上や嗜好の多様化によって、今後は価格帯が高級品に属する食品やアルコール等の市場拡大が期待できる点にも注目したい。
加えて、やや順位は下がるが27%が回答した「ベビー用品、子供向け商品」分野の成長期待も要注目だ。自分の子供や孫に多額なお金をかける中国人の国民性や、いわゆる「一人っ子政策(中国語: 独生子女政策)」が2015年に廃止され、今後の新生児数が増加基調を強める期待が高まっているなどが大きな理由である。越境EC向けのアイテム「ベビー用品、子供向け商品」は大きな潜在成長性を秘めた分野といえるだろう。

中国人消費者 越境EC 売れ筋商品(2016年調査)

次に、越境EC経験者の購入先国の状況を見てみよう。「購入先に関する国別利用サイト状況」は図表2に示す通りで、トップは米国の27%で、日本は第2位(18%)につけている。世界一の人口そして市場を擁する中国消費者を顧客対象としてみると、越境ECビジネスにおいて日本が置かれている状況は決して悪いものではないことが分かる。日本人気の背景には、様々な理由があるのだが、基本的に日本製品の品質に対する信頼感、それを取扱う日本のEC事業者に対する安心感があるようだ。無論、商品の品揃えの豊富さについても問題はないし、人気商品の定番である「アパレル、靴」などは体型が日本人と近いことから、欲しいサイズが比較的見つけやすいといった理由も指摘できる。地理的な近さから、商品配送のリードタイムも欧米に比べて短く、総じて送料も低く抑えることが可能な点も日本人気を支える重要なファクターだ。

中国消費者の越境EC購入先

以上のことの一部は「中国人が越境ECを利用する理由」を考察することでも垣間見える。前編で触れたように、中国のEC利用者のうち越境EC経験のある者は26%に上ると回答している。すなわち4人に1人と、他国に比べて非常に多くの消費者に越境EC経験がある状況なのだが、この背景として図表3に示すような興味深い調査結果がある。

中国人消費者が越境ECを利用する理由

最も多くの回答を集めたのが「商品の品質が保証されている(正規品)」で、ECの最大メリットのひとつである「低価格」(第2位で58.6%が回答)を上回っている。これは、中国国内では模造品、類似品が数多く出回っていて、これらを押し付けられるリスクを回避するために、高級品や贈答の品物の購入は「多少高い代金」を支払っても安心料と考え、信頼できるサイトショップから正規品を購入したいという強い意識の表れだろう。
中国消費者が越境ECを行う理由として「海外で購入し、リピート購入したい」との回答が35.0%と3分の1超に上っているのも見逃せない。中国消費者が海外旅行中に購入した商品を帰国後に越境ECを通じてリピート購入する行動が発生している事実を裏付けているからだ。旅先で商品を手にとって自分自身の目で品質を確認して購入した経験が起点となって、商品への信頼感や購入後の満足感などを得たうえで、平常時の購入で越境ECを利用している様が浮き彫りとなっている。海外旅行時のインバウンド消費と越境ECの関係については、旅行者の口コミやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による情報拡散の波及効果で、越境ECの購買につながるという流れがあることが、複数の越境EC事業者やメーカーへのヒアリングで確認できている。日本企業が越境EC市場への参入を考える場合には、インバウンド消費による商品購入を越境ECへ誘導するような仕組みづくりの構築が重要となることは言うまでもない。

最後に越境ECに関する税制改正動向にも触れておきたい。越境ECを利用する消費者にとっては、商品本体価格に加えて送料や関税を含めた最終的な支払金額が実際の購入を左右する要因となることは容易に想像できるからだ。中国越境ECに係る税制については、中国政府が2016年4月8日に導入した越境EC税制の猶予期間を2018年末まで再延長することが中国国務院の常務会議(2017年9月20日開催)で決定されている(「中国越境EC・税制改正による保税区モデル・直送モデルへの影響」(※3)も併せて参照されたい)。税制は事前の予告もなく変更され、そうしたリスクを完全に排除できるわけではないが、2018年末までは中国向けの越境EC(保税区モデル含む)では従来通りの取引ができることがはっきりしたことは重要なポイントである。

巨大化する中国越境EC市場を攻略して、成功を収めるためのビジネスモデルは各社によって異なる。市場データや販売データ分析に加え、中国消費者の行動特性も加味した戦略を構築することが求められる。ただし、少なからずビジネスチャンスがある半面、中国越境ECで成功するためには厳しい戦いに立ち向かわなければならない。特徴、オリジナリティ、優位性を発揮して世界中のEC事業者を相手に競り勝つ必要がある。中国越境EC市場の攻略では、成功体験のある専門家や越境EC事業支援者に助言を求めることも一考である。

(※1)2017年6月1日付本コラム「中国越境EC市場 データで語る最新動向
(※2)経済産業省「平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」は当社(株)大和総研が受託して実施したものである。
(※3)2016年6月2日付本コラム「中国越境EC・税制改正による保税区モデル・直送モデルへの影響

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