アジアンインサイト
中国養老産業に関する考察と示唆

2015年11月19日

  • アジア事業開発グループ シニアコンサルタント 張暁光

最近、中国の高齢者及び高齢者にかかるヘルスケア事業の現状について、北京、上海を中心に産官学諸分野について有意義なディスカションを行った。以下に感想を含めてポイントを3点ほど紹介してみたい。

1.高齢化社会の進行に伴う中国社会の変化

中国は2014年に65歳以上の高齢者人口が初めて総人口の10%を超え、高齢化社会に突入した。これまでの「一人っ子」政策の影響もあり、今後、高齢化社会への進行スピードが更に加速することで、65歳以上高齢者人口は2030年頃に2.44億人、2050年頃に3.32億人に達すると予測されている。(※1)世界最大の人口を抱える中国は、もはや世界最大の高齢者大国にもなっている。このことは、中国社会に、少なくとも以下のような影響・変化を与えると考えられる。

(1)長年続いてきた「親族養老」から「社会養老」への切り替え

「一人っ子」政策の影響で、現状「421」(高齢者4人、夫婦2人、子供1人)と言われる家庭構造が一般的となっている。これにより、高齢者を家庭で支える伝統的な仕組みが崩壊し始めており、高齢者の介護は社会福祉システムに委ねざるを得なくなってきている。

(2)人口ボーナス効果の低減と一時的な社会貧富格差の拡大懸念

先進国の高齢化社会と異なり、中国の高齢化社会は、近代的な産業化社会になる前に現れたもので、十分に資産の蓄積ができないまま高齢を迎える、つまり「未富先老」(富ができる前に老いる)の状況にある。加えて、高齢者向けの平均的な年金水準が低いため、当面、高齢者人口の拡大による低収入者の増大が、社会貧富格差の拡大につながるとみられる。

(3)迫られる社会システム構造の調整

中国高齢者社会のもう一つの特徴は、「未備先老」(高齢化社会に備える社会的な仕組みができないうちに老いる)である。これは、社会福祉政策面、介護施設及び介護機器などのハード面、また社会心理のソフト面など中国の高齢者福祉事業のすべての分野において言える現象である。高齢化社会の到来を迎えるために、これまでの社会システム構造は今後大きな調整が予想される。

2.高齢者福祉事業の課題及び政府役割の推移

上記諸課題を含めて、中国の高齢者介護事業における具体的な問題点は、下記の通りである。

中国の高齢者介護事業における問題点

中国政府は1990年頃から対策を取り始めており、1990年「中華人民共和国高齢者権益保障法」の発布から、2013年当該法律に対する全面改訂まで、約90件の関連法律・法規、行政通達類を発布した。その中で影響度の高いものは2011年以降に発布されたものである。

1990年~2014年の期間、中国高齢者福祉事業における政府の役割は、①一部補助金拠出方式による直接支援策、②産業化誘導方式、そして2013年からは③政府が主導、主体は市場と、時系列的に変化してきた。その中で2011年は中国の養老元年と呼ばれるほど重要な年であり、この年に中国社会養老サービスシステム構築計画(2011-2015)と、中国高齢者事業発展第12次五ヵ年計画を通して、初めて高齢者福祉事業発展計画が国家経済社会発展五ヵ年計画に組み入れられ、そして、「9064」(90%が在宅養老、6%はコミュニティケア、4%は施設介護)という介護形態の方向が提示された。しかし、2013年から2015年上半期までの成果は必ずしも成功したとはいえない模様である。2015年11月3日に公表された第13次五ヵ年計画(草案)において、初めて中国の介護保険制度の構築を検討すると明記されるようになったことは実に画期的なことであろう。

3.日本にとってのビジネスチャンス

中国のシルバー産業の潜在市場規模について、中国国内の産官学による予測分析結果はさまざまである。これは、シルバー産業に関する定義がそれぞれの予測分析ごとに異なるためであるとみられる。60歳以上の高齢者にかかるすべての医療費と衣食住生活費をカウントされるケースもあれば、民政部門による直接給付補助金のみによる計算例もある。中国でもっとも一般的とされる養老保険基準による計算方式によれば、市場規模は、2015年は5.0兆元(約97.2兆円)、2020年は9.2兆元(約178.9兆円)、2030年は26.7兆元(約519.3兆円)、2050年は107兆元(約2,081兆円)と予想されている。

高齢者福祉事業分野において日中両国は、約10数年間の交流を通して相互理解と信頼の土台ができており、中国側の関係者は、日本の高齢者福祉事業に対して大きな信頼を置いている。将来的に、両国間の本事業に関する協力が本格的に到来すると予想している。特に、①日本の介護保険制度とヘルパー人材育成システム、②日本の介護用具用品の研究開発、生産、活用ノウハウ、③日本の介護用具用品の流通システム(レンタル制度)、④介護施設の運営管理、⑤その他介護関連産業、などは今後日本の関連企業にとって大きなビジネスチャンスを孕んでいるとみられる。

(※1)(出所)China Population and Development Research Center

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