アジアンインサイト
中国は生産強国になれるのか

2014年12月18日

  • アジア事業開発グループ シニアコンサルタント 横山 幹郎

中国が生産量世界一となった製品は、自動車、携帯電話、エアコン、冷蔵庫等、数多くあることは、改めて指摘するまでもない事実である。しかし、各種の産業振興策を見ると、自国技術の開発、自国ブランドの構築が、主要な目標のひとつとなっている。

現在、中国では経済成長の方向性として、これまでの量的拡大から質の改善や効率化を進める方針にあり、製造業においては生産大国から生産強国への変革が望まれている。

これまでも、ミクロの点からは、製品の品質について、品質基準の整備や検査等の運用強化のみならず、消費者の品質への関心の高まりを受けて企業側でも品質管理を重要視した取組みが進みつつある。一方、マクロ面では、国家的には中長期科学技術発展計画の策定や研究基盤が整備されると共に、各種産業振興策において研究開発の促進やブランドの育成を企業に奨励している。加えて進出する外資系企業に対しても、研究開発拠点を設立することへの優遇策を設け、大きな期待を寄せている。また2000年以降に始まった中国企業の国外進出を促進する(走出去)政策は、当初の目的であった資源獲得から、製造業、サービス業や不動産業に広がりを見せており、海外の技術、海外のブランドの取り込みに積極的に利用されている模様である。

しかし、これらミクロ・マクロでの取組みだけで、中国は生産強国になれるのであろうか。“生産強国”に定義があるわけではないが、一般的に、国際的に高い水準の技術力を有し、企業活動においてイノベーションが活発に行われる事業環境とされる。企業が主体となり、新しい製品、生産方法や販売方法を開発し、競争優位を獲得するためのイノベーション活動を支える要素として、これまでの取組みに加え、知的財産保護への信頼が必要な要素であると考える。中国におけるビジネス・リスクのひとつとして、知的財産保護の弱さは過去にも指摘されてきた。例えば企業は、費用を掛けて研究開発を行っても他社から容易に侵害されることが多く、ともすれば成功例を如何に早く模倣することが、厳しい競争市場下において時間的にも金銭的にも企業行動として許容されていた時期もあった。今後は、企業が、自主的にイノベーションを進め、自社独自のブランド戦略に基づいた経営を進めることが期待される。このような経営活動が継続されるためには、企業側のブランド管理の努力と共に、ブランドの法的(※1)な保護による信頼醸成が重要になろう。

最後に、この分野での日中間の取組みとして、2014年10月に我が国の特許庁と中国(中華人民共和国)国家知識産権局間で特許分野における2014年から2016年のアクションプランが合意され(※2)、日中において特許審査ハイウェイ(※3)の利用を促進する活動が進められることが合意された。また商標分野でも、いわゆる悪意の商標出願(※4)への対応策の検討等への国際協力(日米欧中韓)が合意される(※5)などの動きが見られる。国際的・日中間の協力の枠組みを通じた共同研究や検討が強化され、両国の企業活動の環境改善が進むことを期待したい。

(※1)中国での知的財産権保護にかかる法律として、専利(特許)法および関連細則と商標法および実施条例がある。
(※2)2014年10月27日 特許庁ニュースリリース「中国との知的財産分野での協力をさらに強化します」
(※3)各国の特許庁間の取り決めに基づき、第1庁(先行庁)で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請により、第2庁(後続庁)において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組み。
(※4)有名な地名やブランドなどの商標が無関係な第三者により無断で商標出願・登録されること。
(※5)2014年12月5日 特許庁 ニュースリリース「日米欧中韓による第3回商標五庁(TM5)会合を開催しました」

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