アジアンインサイト
11月11日を控え、再注目されるアリババ集団

2014年10月30日

  • アジア事業開発グループ シニアコンサルタント 張 暁光

「アリババと40人の盗賊」は、財宝を隠匿した洞窟を開く時の合言葉『開けゴマ』と呪文を唱える話で有名である。この物語にちなんで名づけられた中国企業がある。電子商取引で中国最大手、今年9月19日にニューヨーク証券取引所にADRを上場した『アリババ集団』(Alibaba Group Holdings Ltd.中国語では「阿里巴巴集団」。ケイマン諸島登録の持ち株会社)である。ちなみに、アラビア語でアリババの「ババ」は「お父さん」を意味し、中国語でお父さんのことを「爸爸」(baba)という。

上場前の予想売出株価は1株60~68ドルだったが、初値は公募売出価格68ドルを36%も上回る92.70ドル、終値は93.89ドルと上場は大成功であった。アリババ集団の時価総額は2,300億ドル(約25兆円)とニューヨーク取引所の上場時価総額のトップ20入りを果たした。これは、同じIT企業のフェイスブックやアマゾン・ドット・コム、トヨタ自動車の2,200億ドルをも上回る規模となった。応募株数が予定していた売出3.2億株を上回る人気となったことから、4,800万株を追加発行し、史上最大の250億7,000万ドル(約2.7兆円)の資金を調達した。これまでの最高額は2010年に中国農業銀行が調達した220億ドルである。

ソフトバンクはこのアリババに出資をしており、2014年3月末時点でアリババ株式の36.3%を保有する筆頭株主である。ちなみに、2000年に創業者の馬雲氏に初めて会った孫正義氏は、僅か6分間の彼との会談で2,000万ドルの出資を即断したとして言われており、この「伝説の6分間」は孫氏の先見性を示す有名なエピソードになっている。

アリババは、杭州師範学院で英語を学び、英語教師だった馬雲(ma-yun、現在50歳、彼の座右の銘は『人は夢なくして成功は成し得ない』)氏を筆頭に、その他17人が1999年9月浙江省の省都杭州で創業した。現在は、世界70カ国余りに拠点を持つ従業員2万人を超す大企業となっている。創業当時は、中国でもやっとインターネットが利用できるようになった頃で、安全で便利な電子取引を普及させたいという想いから、まず企業間電子商取引をサポートするマッチングサイト(B to B)の『阿里巴巴』(alibaba.com)を立ち上げた。それが現在では、240余りの国と地域に5,340万人以上の会員を有するグループに発展している。2003年にC to C(個人間取引)の『淘宝』(taobao.com)、2008年にB to Cの『天猫』(tmall.com)を立ち上げ、電子モールに進出した。事業は急速な成長を続け、2013年9月期の売上高は67億ドル(前期比1.6倍)、営業利益は31億ドル(同4.4倍)に達している。

主要事業は、インターネット上の電子取引『淘宝』とその電子決済『支付宝』(alipay.com)で、月間利用者数は今年6月末時点で2.8億人を超える。取引総額は8.5兆円(14年4~6月)と、日本の電子商取引大手である楽天の約18倍にもなる。収益源は、サイト上の取引手数料や広告収入で、2013年には資産運用の『余額宝』(yuebao.com)に事業領域を広げているが、高収益な金融事業の運営会社は、今回上場したアリババ集団には含まれていないため、グループ全体の潜在的な企業価値は更に大きい。

同社は、周辺関連事業への出資や提携にも積極的に乗り出している。本拠地の中国国内だけでなく、外国企業との提携も強化してきている。ネットショッピングに関連した決済、資産運用で顧客の囲い込み等を得意とはしているが、流通分野に関しては出遅れていた。このため、2013年末から通販大手の米国ショップランナーや中国ハイアールとの合弁企業に出資し、同分野の強化を図っている。

最近、アリババ集団関連のニュースとして中国でもっとも注目されているのは11月11日の「光棍節」の売上である。1が4つ並ぶ「光棍節」(China’s Singles Day)、(別名「双十一」)は俗に「独身の日」ともいい、アリババ集団傘下のネット購入サイト『天猫』(tmall.com)及び『淘宝』(taobao.com)のネットモールでは品物の価格が通常の半額になる販促セールが行われる。アリババのネット決済サイト『支付宝』(alipay.com)の集計によると、2013年の「光棍節」の売上は、たった1日で350億元(約6000億円)(2012年は200億元弱)だったという。この異常な現象は、単に品物が安いということだけでなく、昨今のスマートフォンの普及で特に若者中心にネット購入が容易になったこと、ネット決済の信用度が高まり『支付宝』等では着払いが可能となったこと、品物配達の際の「快递」(日本でいう「宅配便」)の利用増加、等が大きく寄与している。ネットショッピングは、信用力があり安くて安心して買えるということで、上海等の都会人ばかりでなく、地方からも注文が増えてきている。

ニューヨーク証券取引所に上場を実現した『アリババ集団』は、上場後初の「光棍節」を迎えることになる。果たしてどれだけの消費者の関心を集められるか注目したいものである。

中国の消費者向けEC取引高予想推移

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