アジアンインサイト
ミャンマーにおける農業の機械化(2)

2014年8月14日

  • アジア事業開発グループ シニアコンサルタント 高田 直也

ミャンマーは他の東南アジア諸国と同様、コメが主食であり、稲作が農業の中心として位置づけられる。事実、ミャンマー政府の統計によれば、全作付面積1,349万haのうち、約半数に相当する639万haにおいてコメ(水稲)が作付されている(2009‐2010年度)(※1)。2013年におけるミャンマーのコメ生産量は2,800万トン(※2)であり、世界第7位の規模に相当する。

このように、稲作はミャンマーの農業において重要な役割を担っており、ほぼ全土で稲作が行われている。コメの主要産地は、エーヤワディ地域、バゴー地域、ザガイン地域の3地域であり、消費地に仕向けられている。

ミャンマー経済の中心地であるヤンゴンには、コメの取引センターが2ヵ所あり、産地から多種多様のコメが集まる。相場は日々変動しているものの、最近はシュエボー・ポーサン(Shwebo Pawsan)という品種が高値で取引され、一般的な品種に比べ2倍程度の価格であるという。

シュエボー・ポーサンとは、ザガイン地域のシュエボー郡を中心に栽培されているコメの品種である。以前より、エーヤワディ地域において、栽培されていた香り米の一種であるポーサン・ムエ(Pawsan Hmwe)が改良され、当該地区に広まった。シュエボー・ポーサンは、他の品種に比べて生育期間が長く必要であり、雨期に栽培されている。2000年初頭から灌漑設備の改良が進んだことも相俟って、シュエボー郡は、ミャンマーを代表する高付加価値米の産地になりつつある。

シュエボー郡では、牛耕など伝統的な農法からトラクター、耕運機を用いた近代農法への移行段階にあり、農作業が効率化しつつある。また、収穫後の工程として、脱穀、乾燥、精米などがあり、これらの工程に大きな役割を果たす精米所にも近代化の動きを確認することができる。例えば、写真1に示すように、ある精米業者は、数年前に新しい精米機(選別機能付)を自己資金で導入した。これにより、作業効率の向上が図られるとともに、コメの商品価値別分類をこれまで以上に細かく行うことが実現され(写真2)、コメの高付加価値化にも寄与していると推察される。

写真1.シュエボー郡の精米所における旧型精米機(左)と新型精米機(右)
写真2.新型精米機の選別機能によるコメの商品価値別分類

シュエボー郡の事例は、灌漑設備の改良と新品種の導入をはじめとする現地関係者の努力の結果、当該地域のコメが高付加価値で取引されるようになり、その利益が精米所の近代化に活用されていることを物語っている。

こうした状況の下、米国の農薬メーカーがシュエボー郡内で試験的に害虫防除を行う水田を確保し、自社製品の効果を検証しながら、プロモーション活動を進めている。一般的に、ミャンマーの多くの農村は、依然として粗放的な農業を営んでいる地域が多く、高付加価値の農業資材の販売先としての魅力は限定されるが、シュエボー郡のように、付加価値の高い農産品を生産する産地を選択すれば、比較的容易に販売網を構築できるかもしれない。

農業機械の販売戦略としても、まずは付加価値の高い農産品の産地における販売を先進事例として構築し、その後、周辺地域などに応用していくというアプローチの可能性が示唆されよう。

(※1)The Government of the Union of Myanmar (2011) “Myanmar Agricultural Statistics”
(※2)FAOSTATによる。籾ベースの生産量であり、精米ベースでは約1,680万トンに相当する。

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