アジアンインサイト
中国電気類自動車元年のスタート

2014年8月5日

  • シニアコンサルタント 張暁光

今年5月から7月にかけて、中国の電気類自動車産業界に関する重要方針が相次いで発表された。「中国電気類自動車百人会」(※1)の設立に続いて、中国政府は電気自動車の発展促進に関する支援策を連続3本発表した。なかでも、国務院が発表した「关于加快新能源汽车推广应用的指导意见」(新エネルギー車の応用普及を加速する指導意見(以下「指導意見」と言う))が最もインパクトがあり、関連産業界の企業の株価は一斉に上昇した。

「指導意見」には、電気自動車(EV)をはじめとして、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を重点とする次世代自動車産業の国家戦略を再確認する25項目の施策が盛り込まれている。その内容を大別すると、主に六つの分野に分かれるが、ここでは最も重要な三分野を紹介する。

  1. 充電インフラの整備に関する総合政策の確立
    • 充電施設の規格を統一して、電力網構築、都市整備計画、土地利用政策に充電施設の配置計画を取り入れる。2020年まで充電利用に係る電気料金を、政府指導価格方式により、市民用、業務用、政府機関用の三つに分ける。充電施設に関する投資、運営管理事業に補助金を提供する。
  2. 公共セクターにおける利用範囲の拡大
    • 公共サービス分野における電気類自動車の利用計画を策定する。新規または更新車輛の電気類自動車の割合は30%を下回ってはならない。2016年までに、中央国家機関及び地方政府機関の電気類自動車の購入は少なくとも更新車両の30%以上とし、その後、その比率を年々拡大する。
  3. 地方自治体による縄張り意識と参入障壁の一掃
    • 地方自治体による勝手な諸規格と補助車リストを排除し、国家規格、業界規格に準拠させ、国家登録の補助車リストをすべての地方自治体に適用させる。地方レベルでの市場流通障壁は廃止する。

上記「指導意見」の背景を理解するために、中国の電気類自動車産業の発展状況と特徴をここでレビューする。

中国の電気類自動車産業の発展は、完全に政府主導であることが大きな特徴である。その施策に伴う産業の発展過程は大きく三つの段階に分けられる。

第1段階(2001~2009年)は基礎研究と商品化開発期。電気類自動車に係る複数の重大開発プロジェクトは、国家“863”(※2)ハイテク開発計画に盛り込まれスタートした。その成果として、3000項目あまりの新技術と特許が取得され、56項目の国家レベルの産業規格が確立された。この期間に中国電気類自動車の「三縦三横」(※3)の産業構図が初めて確立された。

第2段階(2009~2013年)は、消費促進と市場テスト期。この期より中央政府と地方政府が協働して、補助金付き電気類自動車利用促進プロジェクトを始めた。具体的には全国の40以上のモデル都市と地区で、充電施設の整備と公共用電気自動車への利用を推進したり、6つの都市で個人用電気類自動車の購入支援を行ったりした。

第3段階(2014年~)は政策統合と産業、市場拡張期。上記二段階における試行錯誤を経て、中国の電気類自動車産業は、完成車の性能においても、サプライチェーンにおいても、先進諸国のレベルに近づいて来た。2014年6月まで国家工業と情報化部による認定リストに登録された電気類自動車は130車種もあり、対応登録メーカーも百社程になる。電気類自動車の市場販売台数は2011年から2013年の間、8159台から17,600台と緩やかに増加したに過ぎなかったが、2014年に入ってから急速に伸び始めた。年間販売台数は、少なくても2013年の3倍になる見通しである。

しかし、これまでの十数年の産業発展過程を回顧すると、解決すべき問題も少なくない。例を数点挙げると、①産業発展の水準に不均衡があり、蓄電池や電気制御分野における一部重要部品は依然海外からの輸入に頼っている、②充電施設の整備が遅れ、市場拡大のボトルネックになっている。③地方自治体による縄張り意識と参入障壁が統一政策、統一市場及び業界の統一基準の形成に悪影響を与えている。これらの問題に対処するために、2014年から、前記のような一連の施策が始められた。

中国は2009年から自動車の生産台数と国内販売台数の両方で世界一となったが、電気類自動車の国内市場シュアは2013年0.08%、2014年上半期0.18%と、普及率はまだまだ低い。中国政府の強力な政策支援を背景に、中国電気類自動車産業は、今後大きなチャンスとチャレンジが待ち受ける次のステージに入りつつある。

中国国内主要EVのスペックと販売台数
電気類自動車産業国際競争力総合評価指数

(※1)縦割りの行政及び行政・業界間の障壁を打開し、統一基準による総合効果を引き出すために、官民共同で2014年5月に発足した中国の電気類自動車産業に関わる横断的な業界懇談会で、参加メンバーは各分野の代表的な人物から構成されている。
(※2)「863計画」:英文ではProgram 863と言われ、中国の国家ハイテク発展計画である。1986年3月に発表されたので、そう呼ばれている。
(※3)「三縦三横」:三縦とはEV、PHV、FCV三シリーズの車種を指し、三横は蓄電池、電機、電機制御の三大コア部品を指す。

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