アジアンインサイト
バイオマス通信3 米国2014年農業法が成立、バイオマス推進を継続

2014年3月14日

  • アジア事業開発グループ チーフコンサルタント 桑山 昌平

難航していた農業法が成立

米国で2018年までの農業政策を定めた2014年農業法(The Agricultural Act of 2014 )がようやく2月に成立した。米国の厳しい財政制約の中、主に、巨額な低所得者への食料援助プログラムを巡り政党間で調整が難航していた。農業法の中には、政府のバイオマス政策も入っている。環境保護庁(EPA)が、セルロース由来のバイオ燃料の商業化の遅れからガソリン等に混合するバイオ燃料の2014年の義務量を再生可能燃料基準(RFS)より引下げる案を出すなど、バイオ燃料に逆風が吹く中、新農業法でのバイオマス支援策が注目されていた。

化学品など幅広くバイオマス政策を継続

新農業法では、バイオマス推進支援では、目標を達成したトウモロコシ由来のバイオリファイナリー等への支援と農家への直接支払いの削減等があったものの、オバマ政権はバイオマス支援政策を継続して実施する方針である。政策の一貫性は見事であり、これは新産業の創出には欠かせない。バイオ燃料推進による米国中西部の地域開発成果が大きかったことも政策が維持できた要因であろう。2014年農業法では、新たに再生可能資源から汎用化学品を製造するバイオリファイナリーへの支援が開始されるなど、自動車用燃料以外のバイオマスの用途拡大を目指した幅広い支援策が盛り込まれた。

糖質由来のバイオリファイナリーが登場するか

この中で、特に筆者が注目したいのは、新たにサトウキビなどとともにスィートソルガムが保険対象作物に指定されたことである。これにより、農家は収入変動のリスクが軽減されるので、バイオ燃料原料としてスィートソルガムの大規模栽培に踏み切れる可能性が高まる。サトウキビやスィートソルガムを原料とする糖質由来のバイオエタノールは、温室効果ガス(GHG)削減効果がトウモロコシの澱粉由来のバイオエタノールより高く、EPAの分類ではセルロース由来とともに先進バイオ燃料と定義されている。米国は砂糖の大消費・生産国にもかかわらず、政府の砂糖保護政策により原料価格が高く、これまで糖質ベースのバイオエタノール生産は皆無に近かった。RFSでは、トウモロコシ由来のバイオエタノールのガソリン混合義務がほぼ上限となる。混合義務の中心として期待されていたセルロース由来のエタノールの商業生産が遅れる中、混合義務量の不足はブラジルからの糖質由来の先進エタノール輸入で埋めることとなる。これには、国内で、エネルギー安全保障上の批判も起こっていた。

中西部から南部等へバイオ燃料が拡大するか

バイオ燃料は、原料が自然条件の制約がある栽培植物なので、元来、地域で生産消費する性質のものである。世界一のバイオ燃料生産国の米国でも、その生産・普及は遠距離輸送インフラの問題もあって、主に中西部に限定されていた。砂糖保護政策との兼ね合いはあるが、2014年農業法をきっかけに、サトウキビの大生産地である南部のフロリダ州、ルイジアナ州、ハワイ州などでサトウキビ/スィートソルガムのエタノール生産が始まり、バイオマス燃料が地域的に拡大することが期待される。

スィートソルガムが第3の資源(エネルギー)作物として登場するか

さて、スィートソルガムは、大和総研のエマージングマーケットニュース等でもたびたび紹介してきたが、アフリカ原産のイネ科の植物で、実を採るもの(グレインソルガム)と、茎に貯まるシロップを利用するもの(スィートソルガム)に大別される。

古代からの作物で、日本でもコウリャン(高粱)とかモロコシとか呼ばれ、戦前は中国東北部で大規模栽培も経験している。米国でも食品やシロップ原料として、中国でも白酒原料やカユとして等、多くの国で馴染深い作物である。スィートソルガムは、搾汁液の劣化が早い、大きすぎて作業性が悪い、主要作物でなく主要農家が栽培しないなど弱点はあるが、水や肥料が低投入で済み、成長が早くバイオマス量が大きいのは資源作物として、大きな魅力である。

日本では、飼料作物として長年研究しており、長野県畜産試験場では、国際的に見ても優秀な種子を開発している。イネの知見を応用し、大学等で最新のゲノム育種などにも取組んでいる。大和総研でもコンサルティングの一環として、ベンチャー企業などと、ベトナム北部、中国吉林省で、実証試験を行った。結果、サイレージ飼料と濃縮糖の同時生産が可能で、耕作不適なアルカリ塩類土壌でも栽培可能なので、食料とバッティングしない1.5世代のエネルギー原料・飼料作物としてアジアで有望との知見を得た。

米国では、土壌保全の為の多くの作物(綿花、ダイズ、ピーナッツ、シュガービート等)のローテーション用の資源作物として農務省やフロリダ等多くの大学で開発研究を進めている。また、サトウキビは収穫まで1年かかるが、スィートソルガムは3~4ヶ月で収穫可能なので、原料を組合せ、精糖工場併設エタノールプラントの稼働率を大幅に向上させる実証試験をブラジルで行っている米国の種子ベンチャー企業(CERES社)もある。近年、グローバル市場を視野に種子開発販売でデュポン、モンサントなど大手も参入して来ている。

当然、米国でもアジアでも優良種子提供だけでは事業化は到底無理だが、米国の事業関係者が大規模栽培から販売まで、どのようなバリューチェーンを形成してスィートソルガムを第3の資源作物に成長させてゆくのか、そのビジネス仮説の展開、課題の解決の事業化プロセス手腕を注視してゆきたい。

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