アジアンインサイト
陸路で訪れるカンボジア

2014年2月27日

  • アジア事業開発グループ コンサルタント 太田 紗奈絵

2013年のカンボジアへの外国人来訪者数が、およそ420万人となったことが先頃観光相の発言で明らかとなった。当初政府が目標としていた415万人を上回る結果であり、2012年(358万人)と比べて約17%の増加となる。外国人来訪者数は2004年以降増加し続けており、観光関連産業を含むサービス産業は、カンボジアのGDPのおよそ4割を占め、経済成長を支える重要な産業のひとつである。

利用経路別入国者数をみると、陸路利用での入国者の割合が増加している。陸路利用者数は、2003年時点では25万人(全体の35%)に過ぎなかったが、2012年には179万人と空路利用者数の172万人を上回った。また、2013年(11月までの累計)でも、陸路利用による入国者が空路利用を上回っている(陸路利用者51%、空路利用者47%)。陸路利用者の増加には、メコン経済圏各国の連携強化を目的としたハード・ソフトインフラの整備が進んだことが背景のひとつとして挙げられよう。

図表1:外国人来訪者数の推移

カンボジアはベトナムとタイに挟まれた位置にあり、その地理的優位性が外資系企業の進出を後押しする理由のひとつとなっている。また、日本をはじめとする諸外国や国際機関からの支援により道路整備が進められ、カンボジアの複数の国道は、南部経済回廊の一部として近隣国との産業連携を行う上でも重要な経路となっている。

道路整備が進んだことに加え、カンボジアは越境交通協定(CBTA)(※1)に加入している。CBTAでは、越境車輌についての取り決めがあり、許可を得た車輌は国境を越えた運送が可能となる。この仕組みを利用して、複数の旅行会社が長距離バスの運行を開始しており、陸路でのカンボジア入国者の増加に寄与している。

図表2:カンボジアの国道と国境

2014年2月時点で越境長距離バスが定期運行されているルートは、①ホーチミン-プノンペン間、②ホーチミン-シェムリアップ間、③バンコク-シェムリアップ間、④バンコク-プノンペン間、の4ルートで、国道1号線、5号線、6号線を利用する(図表2参照)。料金は片道13ドル~30ドルと、空路利用より格段に安価である。トイレ付の大型バス(日系メーカーの車輌も珍しくない)を利用し、取扱旅行会社によっては軽食とミネラルウォーターがサービスされる。

カンボジアへの国別訪問者数はベトナムが最多(全体の2割程度)であり、ホーチミンとカンボジアの主要都市を往復する便が最も多く運行されている。現地でのヒアリングによると、ベトナム-カンボジア間は仕事や生活のために行き来しているベトナム人が多く、タイ-カンボジア間の利用者はアンコール遺跡群を訪れる欧米人が多いとのことであった。

長距離バスを利用する際は、国境地点でバスを乗り換える必要がなく、荷物も一緒に運んでもらえる。バスを利用しないで陸路国境を越える場合は、双方の国境付近までの移動手段を事前に確保した上で、一方の国の出国審査施設からもう一方の国の入国審査施設まで自身の荷物を持ち、徒歩で移動しなければならない(なお、施設内外ではタクシーやバイクタクシーの客引きがいたり、「入国審査特急サービス」などと声を掛けられることがあるが、利用はお勧めしない)。ベトナムとの国境であるバベットからベトナム側のモクバイまでの距離はおよそ500m程度であるが、乾季には35℃を超える猛暑に見舞われ、雨季にはスコールのような雨に降られる可能性もある。なお、タイとの国境であるポイペトとタイ側のアランヤプラテート間の距離は約200m。

バスでの移動は時間こそかかるものの、島国である日本の出入国にはない陸路での国境越えを経験することができる。また、ベトナムとの間を移動する場合は、バスに乗ったままメコン川をフェリーで渡るルートを通る。

現時点では、日本から空路でカンボジアへ向かう際には周辺国等での乗り換えが必要であるが、直行便就航のニュースも報じられている。さらに、フェリーを利用せざるを得ないメコン川にも日本の支援による橋梁(ネアックルン橋)の建設が進んでいる(2015年完成予定)。

著しい経済成長と共に利便性も向上されつつあるカンボジアではあるが、長距離バスでのどかな風景をのんびり眺めながら、都市開発著しいプノンペンやアンコール遺跡群へ向かうのも、また妙味のある旅となろう。

ポイペト-アランヤプラテート国境の様子・メコン川フェリー・バベット-モクバイ国境の様子

(※1)越境交通協定(Cross Border Transportation Agreement):越境交通の円滑化に関する多国間協定でメコン圏5ヶ国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム)と中国の計6ヶ国が署名している。ヒト・モノの国境を越えた移動に対し、ハード・ソフトインフラの整備が進められている。

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