アジアンインサイト
ミャンマーにおける農業の機械化(1)

2014年1月23日

  • アジア事業開発グループ コンサルタント 高田 直也

東南アジアの「フロンティア」としてミャンマーが注目を集めている。依然として人力や役畜に依存するところも多いミャンマー農業だが、次第に農業近代化の萌芽を感じるようになってきた。先日、筆者はミャンマーの農村に訪問する機会を得たので、現地における農業機械へのニーズ等について、数回にわたって紹介したい。まず、本稿では、稲作におけるコンバイン(収穫・脱穀等を複合的に行う機械)を中心に報告する。

ミャンマー最大の都市ヤンゴンの中心部より、自動車と渡し船を乗り継いで約1時間の距離にあるA村は、ヤンゴン川岸の平野部に位置している。村の農地面積は1,780エーカー(約712ヘクタール)であり、雨期には全ての農地で稲作が行われている。灌漑が未整備のため、乾期には豆類などが栽培されている。伝統的に農作業は、村内の農業労働者により行われてきた。しかし、近年は農作業の担い手が少しでも有利な条件を求めて他産業(ヤンゴンの工業団地を含む)やタイ・マレーシアなど近隣諸国への出稼ぎをする事例も多くなったという。その結果、農業の現場において農業労働者が不足する事態に直面している。実際、A村では、収穫作業のための労働力を村外から調達するため、数カ月も前から確保する必要に迫られている。

こうした状況の下、作業時期の重なりやすい収穫適期において、十分な労働力が確保できずに収穫できないという事態が生じている。具体的には、稲穂を実らせた状態のまま、イネが放置され、その間にネズミや野鳥による食害や降雨等による品質劣化などの問題が発生している。A村のある農家によれば、収穫前のロスにより、現在の単収(籾つき)は1エーカー(約0.4ヘクタール)あたり1.2トン(1ヘクタールあたり約3トン)に過ぎないとのことである(※1)

写真1. 収穫時期にイネが倒伏した状態の水田(A村)

一方、A村では比較的資力のある大規模農家がコンバインを購入し、自家で耕作する水田の収穫後に、コンバインによる収穫作業請負サービスを他者に提供する動きが確認された。人手の場合、10人で1日かけてようやく1エーカーの収穫ができるのに対し、70馬力のコンバインでは、1日に10エーカーの収穫が可能であるという。また、人手による収穫作業の費用が1エーカーあたり45,000~55,000 チャット(1チャット≒0.1円)であるのに対し、コンバインによる収穫作業請負サービスは1エーカーあたり40,000 チャットで提供されている。A村でコンバインによる収穫請負サービスを希望する農家は多いが、村内のコンバインは2台に過ぎず、現状では十分対応しきれていない。

写真2. コンバインによる収穫(A村)

農業労働力の不足問題は、ヤンゴン近郊に限った問題ではなく、地域による深刻度の違いはあるものの、併せて訪問したバゴー地域、マンダレー地域、ザガイン地域などの稲作地でも確認された。各地で散発的にヒアリングした結果をまとめると、「イネの収穫時に労働力不足となるため、コンバインなどの農業機械を導入したい。しかし、購入するだけのまとまった資金はない。レンタルサービスなど、初期費用の不要なサービスがあれば利用したい。」という声に概ね集約される。

今後、ミャンマーの経済開発と相俟って農業部門から他産業部門等への労働力シフトが進むとすれば、農業生産のための労働力不足が深刻化する可能性があろう。すなわち、コンバインなどの農業機械に対するニーズは高まりつつあり、地域の有力者(大規模農家等)をターゲットに農業機械を売り込む余地のある段階に差し掛かったと推測される。ただし、現地の水田の多くは、基盤整備が十分なされていない。このため、例えば、排水の完全になされていない状況で収穫するケースなども想定され、農機メーカーは臨機応変な対応が必要となろう。

最近、我が国の政府系機関においても、国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(JETRO)による関連調査や市場開拓に向けた視察ミッションの派遣など、ミャンマーにおける農業機械の市場性を意識した官民連携の取組みが指向されている(※2)。現地の農村において、日系メーカーの農業機械が一般的に見られる日も近いかもしれない。


(※1)FAOSTATによると、ミャンマーにおけるコメ(籾つき)の単収(全国平均)は1ヘクタールあたり4.0t(2012年)である。
(※2)詳細については、国際協力機構(2012年)『ミャンマー国農業機械化に関する情報収集・確認調査』、日本貿易振興機構(2013年)『ミャンマーの農業機械・資材市場調査』などを参照。

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