アジアンインサイト
アセアン諸国のコメ生産と、ポストハーベスト・ロス対策への期待

2013年10月10日

  • アジア事業開発グループ シニアコンサルタント 横山 幹郎

トウモロコシ、小麦と並び世界の三大穀物と呼ばれるコメは、アジア地域が世界最大の消費地であり、同時に、国の社会的基盤である農村・農民・農業において、伝統的・文化的価値を支える農作物である。アジア諸国の農村部に訪れれば、季節は異なれ水田に育つ稲を見かけては日本の農村風景を思い出し、日本がアジアの一部であることを感じた経験を持つ方も多いと思う。そこで今回は、アジア地域のコメ生産・流通の現場において研究が進むポストハーベスト・ロスという課題を紹介する。

まず、アセアン諸国におけるコメの生産状況について触れる。ADB(アジア開発銀行)の調査によれば、2011年、世界のコメ生産量は約7億2,200万トンに達し、1970年の約3億1,600万トンから約2.3倍にまで増加した。その中でアセアン諸国は、作付面積、面積当たり収量ともに世界平均を上回る成長を遂げた結果、生産量は1970年の約6,300万トンから、2011年には約2億700万トンへと約3.3倍に増加した。同地域の占める割合も、1970年の20%から2011年には29%まで上昇し、今後も重要なコメ生産地の地位を担うと考えられる。加えて貿易面では、2011年の世界輸出量3,500万トンの内、同地域は約45%を占めており、世界的な存在感の高さがうかがえる。

ASEAN地域のコメ生産量が大幅に拡大

但し国別にみるとアセアン諸国の中でも、世界的にも主要な輸出国であるタイや、1990年以降急速に輸出量を拡大させたベトナムが存在する一方で、マレーシア、フィリピン、インドネシアなどの輸入国も存在する点が特徴的である。今後も、域内のコメ貿易が盛んになるにつれて、各国のコメ生産性が、輸出産業としてのコメの可能性を計る要素として注目されよう。2011年の国別生産性(ヘクタール当たり生産量(トン))を見ると、日本の約4.7トンやベトナムの約3.5トンに比べ、ラオスやミャンマー、カンボジアは約2トンの水準にあり、今後の生産性向上が期待される。

これまで生産性向上という開発目標に対しては、作付可能面積の拡大や収量確保を目的に、農道・灌漑等のインフラ整備、優良品種の導入及び農業指導など、その土地の地理的条件に合わせた個別の対策が、援助機関と関係国政府により進められてきた。しかし近年、農家が収穫したコメが、複数の流通段階を経て、消費者に至るまでのサプライチェーンにおける損失(ポストハーベスト・ロス)に着目した研究・調査がすすめられている。FAO(国際連合食糧農業機関)によれば、収穫から、乾燥、輸送、精米、保管など各段階を経た量的損失は、収穫前重量の10%~37%と推定されている(※1)。また未熟な処理方法による質的損失も加えると、その経済的な損失は無視することはできない。今後は、生産性向上のために、ポストハーベスト・ロスへの取り組みも、同様に取り上げられることになろう。

一般に農業・農村の振興は、アセアン諸国における重要な政策課題であり、自然環境の影響が大きく、繰り返しになるが、そこに住む人間の伝統的・文化的価値観にも深く根ざしていることから急速な変化を望むことは難しい。もちろん製造業と農業を同一視することには飛躍があるが、製造業ではこの20年、生産現場から調達・流通・販売・顧客までのサプライチェーン管理の重要性への認識が高まり、その結果、業種を超えた様々な分野や国内外からの事業参入・提携が起き、新たなサービスが開発・普及するなど、改革を通じて効率化が達成されてきた。同地域の農業、特に、基幹作物であるコメの分野においても、現地の実状に合わせた新たな潮流が起きることに期待したい。


(※1)FAO, “Agricultural engineering in development- Post harvest losses”, 1994

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