ミャンマー女性をめぐるトレンド(2)

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  • シニアコンサルタント 高橋 陽子

2013年7月のOECDのレポートは、今後20年以内にミャンマーで高齢化が始まると指摘している。同レポート中の国連予測(※1)によれば、10-64歳の人口が総人口に占める割合は、2015年の78.15%をピークに徐々に減少し、2023年には77.4%、2030年には76.4%となる(図1)。ちなみに日本の実績では、同割合は1965年に77.4%、25年後の1990年に76.4%であった。このことからもミャンマーの高齢化は、日本が経験してきたよりも急激に進展すると予測されていることが分かる。


こうした人口構造の変化の一因として、出生率の低下が指摘されている。ASEAN諸国の合計特殊出生率(※2)は、1980年には平均4.49と高い水準であったが、2011年までの約30年間で2.15まで減少した。ミャンマーでは、1980年には4.56とASEAN諸国平均に近い水準であったが、2011年には1.98というように、ASEAN諸国平均よりも減少傾向にある。(図2)


ミャンマーの合計特殊出生率の低下は、1960年代後半から始まっている。1960年代には一貫して6以上であったが、1960年代後半にピークを迎え、1970年代には6.08から4.57へ急激に低下、その後10年ごとに1低下するペースで2000年に2.43となり、2011年には1.98となった。(図3)その間、2002年に世界の人口置換水準(※3)を下回る2.29、2008年には先進国のそれを下回る2.05となった。


ミャンマーは後発開発途上国(LDC)(※4)に認定されているが、同49ヵ国の中で合計特殊出生率が最も低い国である。また同49ヵ国中では唯一、先進国の人口置換水準をも下回っているという特殊な傾向を示している。また、国連開発計画の「人間開発指数」においても低人間開発国(46ヵ国)に指定されているが、その内で、合計特殊出生率が人口置換水準を下回っている唯一の国である。低開発国では多産多死が一般的であるが、ミャンマーは低開発にも関わらず、少子化が始まっている特殊な国という位置付けである。


ミャンマーにおける出生率が低下している原因として、女性の未婚率の高さが指摘されている。日本と同様に、ミャンマーの文化では子供を産むことの前提として結婚が不可欠であることから、未婚化が進むことで出生率は低下する。


国連人口基金によれば、ミャンマーの再生産年齢(15-49歳)にある女性に占める未婚女性の割合は、1983年には34.5%で三人に一人が未婚であったが、2007年には44.9%で、ほぼ二人に一人が未婚であったことが報告されている(図4)。ちなみに日本の同割合は一貫してミャンマーを下回っており、1980年に30.1%、30年後の2010年に42.7%であった。同報告書では、合計特殊出生率は1983年に4.7、2007年に2.0であったが、配偶者がいる女性の出生率を求めた有配偶出生率(※5)では1983年には7.0で合計特殊出生率との差は2.3、2007年には4.7でその差は2.7と拡大していた。


未婚化が進展する背景については様々な議論がなされているが、その一つとして女性の高学歴化が指摘されており、ミャンマーの女性もまた例外ではない。この点については、次回述べることとする。

図1 ASEAN諸国の10-64歳人口比率の推移予測(2010-2030年)
図2 ASEAN諸国の合計特殊出生率の推移(1980-2011年)
図3 ミャンマーの合計特殊出生率の推移(1960-2011年)
図4 ミャンマーにおける有配偶出生率、合計特殊出生率、女性未婚率(1983-2007年)

(※1)UN (2011), World Population Prospects (2011), the 2010 Revision: Standard Variants (database),(19 April 2013アクセス).
(※2)その年の15-49歳の女性の年齢別出生率を合計したもの。1人の女性が、その年の年齢別出生率で一生の間に子どもを生むと仮定したときの子ども数に相当。
(※3)母親世代と娘世代のサイズが等しくなるために必要な女性一人当たり出生数。先進国では2.07‐2.08、世界全体では2.3、死亡率の高いサブサハラ・アフリカでは3.0を上回る。
(※4)国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々。49ヵ国中アジアは9ヵ国、ASEAN諸国ではミャンマーに加えて、カンボジア、ラオスの3ヵ国が認定されている。
(※5)合計特殊出生率を、配偶者が居る女性に限定して計算したもの。死別、離別などは含まない。

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