環境博覧会からみた中国の環境関連業界の現状

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中国の経済の都と呼ばれる上海は、近年、経済発展とともに、世界からの投資を引き寄せてきた。一方、高速発展の代償として、環境破壊が顕在化しはじめた。特に、空気、水、加えてごみ処理に関する対策が遅れている。上海は中国の一地域でもあるが、環境問題ーにおいては、中国の縮図といっても過言ではない。12次五ヵ年計画において、政府が最も注力推進している分野は、エネルギーと環境セクターである。エネルギーに関する限り、基本的に政府、ないし国有企業が産業を独占しており、近年国家独占の状態から、一定程度緩和されているとはいえ、依然外資と民間からの参入は困難である。一方、環境セクターは、比較的参入しやすい状態にある。インフラ整備など大型プロジェクトは依然、政府が管掌しているが、家庭用レベルでは比較的オープンな業界でもある。


2013年5月13日~15日、上海浦東にある新国際博覧センターにて、今年中国最大級の環境博覧会が開催された。水・汚水・資源回収・大気汚染処理など国内外最先端の技術を集結し、展示面積は約6000㎡であった。出展企業数は800社を超え、これまでで最多となった。国別に見ると、中国企業の出展社数は549社(2012年は426社)、欧州企業の出展社数が144社で(2012年は124社)、うちドイツ企業が最多の69社であった。一方、アジア企業(中国、香港、台湾を除く)の出展社数は53社で(2012年は59社)前年割れとなった。その中で、日本企業の参加社数減少が著しく(34→26に)、減少率も主要参加国のなかで最高だった。昨年9月からの尖閣問題の影響を強く受けていると思われる。


業界別に見ると、資源回収関連と廃棄物処理関連の出展社数がそれぞれ約4分の1で、水処理(浄化、ろ過、インフラ整備)関連が約半分近く占めている。水処理関連の出展社数が圧倒的に多かったわけである。中国において、水関連事業は大きく分けるとインフラ建設、高圧ポンプ、水処理膜、配水管、総合管理の5つの分野に分けられる。高圧ポンプと配水管にかぎってみると、中国企業の出展が多い。海外製と中国製の品質にそれほど大差がなく、比較的安価な中国製が市場シェアを占めているという。
一方、品質的に中国製が大差をつけられているのが水処理膜技術である。中国製は価格的には魅力だが、品質面ではろ過能力が低い。液体と固体の分離において、中国製が多く使われているが、生活用水分野においては、依然海外製が高い市場シェアを占めている。日本はこの分野において、世界トップの技術力を誇り、中国の大型水処理施設や、海水淡水化施設は日本の技術を導入しているのが現状である。この分野において、日本の技術はまだまだ需要があるともいえる。


今回の博覧会で最も印象的だったのは、中国技術の進歩ぶりである。たとえば、セラミックス膜は、耐熱性、耐久性に優れ、工業用水処理など特殊な分野に使用されているが、高い技術力が要求されているため、これまで、国内生産がされていなかった。今回の展示会では、こういった先端技術を開発している中国企業の出展も見受けられた。中国企業の技術開発への注力を示す証であろう。政府による産業有害物質の処理基準の厳格化などの政策も、環境関連技術の進歩を促しているとみられる。


江蘇省、山東省などでは、化繊メーカー、製紙メーカーからの廃液による土壌、地下水汚染が深刻であり、北京、上海などでは自動車急増による大気汚染も問題となるなど、様々な地域で、様々な環境問題を抱えている。そのため、中国政府は今年141.3億元(2,331億円)の資金を投入し、環境問題への取り組みを強化している。今後、中国において、環境関連分野はエネルギー分野に肩を並べるほどの、急成長が見込まれる分野となろう。


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