ミャンマーにおける人材育成の視点 ~IT人材育成~

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「2013年はアクションの年」

本年1月に麻生財務大臣が訪緬し、円借款の再開、積極的な経済協力等を表明した。また昨年12月には、日本・ミャンマー政府間においてミャンマー・ティラワ経済特別区開発に関する協力覚書を交わしている。
さらに昨年11月に施行されたミャンマー新外国投資法は、近々公表されるであろう施行規則が気になるところではあるが、外資企業にとっておおむね前向きな内容ととらえられている。
おそらく本年は、これまで進めてきた官民のミャンマー国への取り組みを基礎とした「アクション」の年になると思われる。

「技術者人材の流出」

これからのミャンマー国への開発支援を進めていく中で、常に寄り添うテーマが「人材育成」である。
ICT分野を例にとってみる。これまでもわが国は、官民によるさまざまなIT技術者育成プログラムに取り組んできた。特に大学や企業と連携した、技術者(プログラマ、SE)育成に力を入れている。IT技術者育成は、海外からのオフショア開発受託によるミャンマーIT企業の発展も狙いの1つにあっただろう。
しかし、技術を修得したミャンマー人が、タイ、シンガポールなどに流出している現状がうかがえる。いわゆる知識層の流出(Brain Drain)である。これは他国との報酬の差も理由のひとつではあるが、国内で就職先がみつからないことが大きな要因と考えられる。

「作る技術と使う技術」

今後日本からもネットワーク、クラウド基盤といったインフラや、さまざまなアプリケーションがミャンマー国に構築されていくだろう。それらがどのような仕組みで、どのように作られているのかを理解することは重要であるが、先進国が何十年もの間積み上げてきた「作る技術」を短期間で習得するのは非常に難しいことである。
一方で、ICTにはその仕組みを利用する人がいる。会社の中でOAを利用する人、そのOA操作の問合せに対応する人、伝票を入力する人などさまざまであるが、それらの人々はそれぞれの業務に見合った「使う技術」が必要である。


ミャンマー国の経済発展には、外資を含むミャンマー国内企業の発展が欠かせず、企業の発展にはICTの活用が不可欠である。すなわち企業の社員には、「使う技術」、言い換えればIT利用スキルが必要となってくる。
ミャンマー国内では、外国企業の進出、現地企業との合弁等が今後さらに進むと思われ、新外国投資法では、外国企業の現地事務所においてミャンマー人の雇用確保に関する規定も盛り込まれている。このような背景のなか、ミャンマー国内の雇用改善を進めていく上で、就職を控えた学生という、広い範囲での人材にも一定のIT利用スキルが求められてくる。


IT利用スキル保有者を拡大することは、今後日本政府が進めていくさまざまな協力・支援案件への現地人材の参画を促進し、ミャンマー国の経済発展に多面的に貢献すると思われる。これまでのIT人材育成の多くは、専門知識の修得による技術者育成に重点が置かれていたが、IT利用スキル保有者拡大という視点での人材育成プログラムがより必要になってくるのではないだろうか。

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