アジアンインサイト
ミャンマー改正労働組合法(2011)とストライキの行方

2012年10月18日

  • アジア事業コンサルティング部 芦田 栄一郎
2011年3月に軍事政権から民政化へ移行したミャンマーで労働者のストライキが続発している。各種報道によると今年に入り、少なくとも50ヶ所以上の工場でストライキが発生しているようである。
 
従前の軍政下では、「5人以上の人々が集会を行う場合には事前届出を行い、許可を得るものとする」旨の通達が出されており、労働組合活動等は事実上実施できない状況であった。
 
ミャンマーでは1927年に施行された労働組合法(The Trade Union Act)が存在していたが、2011年10月の労働組合法改正により労働組合の活動や権利に対する規制が緩和され、それまで禁止されていた労働組合の結成やストライキ権の行使は一定の要件を満たせば容認されることとなった。
 
労働組合を結成するための要件は「最低30名以上の労働者が雇用され、かつ全労働者の10%以上が活動に参加することが必要」となっている。また他企業と共同での結成も可能となっている。ストライキ権を行使する際には、事前に雇用主と仲裁団体に対して実施日時、場所、人数、方法、期間などを届け出る必要があり、違反した場合は罰せられるとしている。
 
ただし、現時点では労使ともに交渉の経験がないことも多く、労働者の意見もまとまらないまま議論に突入するなど、お互い手探り状態で折衝している企業もあるようだ。
 
ミャンマーでは敬虔な仏教徒が多く、温和な国民が多いといわれている。現在までのところ、ストライキを発端とした過激な暴徒などのニュースは聞いていない。
 
今後のストライキの行方であるが、一過性のものでない、と筆者は考える。ミャンマーに進出している企業やこれから進出を検討する企業は、労働争議の発生を想定してマネジメントすることが求められるであろう。ミャンマーにおける経済成長が今後も期待される現局面では、物価上昇が想定される。ワーカーにとってみれば前年と同額の賃金水準では生活水準が悪化するばかりである。対策としては賃金水準を適宜スライドさせていくことで労使円満の環境を構築し、ワーカーから良質な労働を引き出すことが可能となるであろう。今後もストライキが発生するリスクを想定しながら、それを予防する工夫も必要となる。単なる最低賃金の管理だけでなく、インセンティブプランの検討、コミュニケーションの円滑化など様々な対策を講じることが得策と考える。
 
ストライキは近隣エリアで発生すると飛び火することも多いことから、周辺企業での労働争議関連情報にアンテナを立てることも必要であろう。また、労働争議が起こってしまった場合のマニュアル作成や、仲裁や調停を頼れる関係者との連絡も普段から密にしておくとよい。
 
民主化に伴い、「労働者としての権利意識」が芽生えてくるのは必至である。今後予定されている「新外国投資法」制定や「経済特区法」の改正に伴い、既存の労働関連法規を適用するのか、それに優先する特別法があるのかを確認しながら進めることをお勧めしたい。経営資源の根幹である「ヒト・モノ・カネ」の「ヒト」という経営資源をいかに活用するかがミャンマー進出の成否を分けるステージに入ってきている。


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