アジアンインサイト
急成長する中国早期教育業界の現状と課題

2012年9月6日

  • 大和総研(上海)諮詢有限公司 陳志偉
中国は、経済の高度成長に伴い、ゼロ歳からの早期教育も急成長している。1998年、中国初の幼児教育ブランド東方愛嬰(LOVE)が設立されて以来、早期教育施設が北京や上海、広州などの大都市で急速に創設され、現在は全国で約1万2000施設にのぼっている。その背景には、経済の高度成長で急変する社会の状況がある。現在、早期教育市場の主力顧客は「80後(80年代生まれを指す)」の若い両親で、彼らは、生活環境の全く違う時代に受けたしつけがもはや通用しないと痛感しており、厳しい競争社会でスタート時点から子供が出遅れないようにさせたいと考えている。

図1:主な早期教育ブランド
図1:主な早期教育ブランド
出所:各種公開資料により大和総研(上海)作成

しかし、このような急成長の裏には、以下のような様々な問題も生じている。


一. 法規制及び業界基準の未整備

中国の早期教育ブランドといえば、金宝貝(GYMBOREE)、紅黄藍(R.Y.B)、新愛嬰(Combaby)、東方愛嬰(LOVE)等が知られているが、これらのブランドの会社名は、何れも調査会社やコンサル会社の名称を使っている。中国では早期教育を含めた「民間学校」のライセンス取得が極めて難しくなっており、「コンサル会社」等の営業許可書で「民間学校」を展開しているのが一般的である。また、教育内容も各社が統一した基準を持っておらず、それぞれが自身の特徴を出すために、海外の教育理念やカリキュラムをひたすら導入している。例えば、GYMBOREEのバイリンガル教育やCombabyのモンテッソーリ教育等、多くの場合、自らカリキュラムを設計する能力が欠如している。


二. 監督側による規制強化の不備

  1. 虚偽宣伝
    真実性を伴わない広告宣伝や過大表現等が早期教育業界におけるもっとも大きな問題である。これは監督部門による規制の不備が最大な要因となっている。
  2. 高額な授業料設定
    早期教育の場合、義務教育のように全国並びに地方レベルの監督機関が存在せず、現状、早期教育市場は完全に売り手市場であるため、授業料の徴収基準が一方的に早期教育会社によって定められている。この結果、多くの早期教育会社は授業料水準が幼稚園ないし大学のそれよりも高くなっている(図2を参照)。こうした高額な授業料の設定は早期教育事業の健全な発展を妨げる要因になり得る。

    図2:幼児英語教育授業料一覧
    図2:幼児英語教育授業料一覧
    出所:各種公開資料により大和総研(上海)作成
  3. 関連法制度の未整備
    全国において、ごく一部の地域を除けば、早期教育業界に関する管理制度が整備されなかった。例えば、ハード面では、消防施設、教室の総面積、一人(子供)当たり使用面積、使用される地面材料等を規定する必要がある一方、ソフト面では、早期教育会社の責任者及び担当教師の持つ学歴、職歴及び資質等も明確に規定する必要がある。


三. 教師人材の不足

早期教育に従事する教師の多くは、幼児(3~6歳の幼稚園の幼児)教育専攻を卒業した人間である。中国の大学や専門学校には早期教育(0~3歳)のような専攻がないため、教師人材は基本的に企業自身による育成に頼らざるを得ず、教師の質もまちまちな状況である。一部の企業はコスト削減の観点から、教師人材の育成に時間とコストの投入を抑えている。例えば、モンテッソーリ教育のトレーナーとなるために、海外では2~3年の研修を受けてからでないといけないが、ここでは2~3ヶ月の研修を経れば簡単に授業に出られる。幼稚園や小・中・高等学校の教師の場合、それぞれ教師ライセンスを必要とされるのに対し、早期教育の場合、そもそも教育部門の管轄範囲に入れられていないため、きちんとした資質のトレーニング及び認証制度も設けられていない。制度上の欠陥も教師人材の不足につながっている。


上述のように、中国の早期教育市場は急速に拡大しているが、ハード面もソフト面も実に改善される余地が大きい。今後、政府部門や業界関係者等一緒になって改革を行っていかなければ、何れバブルが崩壊し、消費者から見捨てられる日も遠くないだろう。


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