アジアンインサイト
ベトナムにおけるアグリビジネス展開の留意点

2012年7月26日

  • アジア事業開発部 高田 直也
2008年に1人当たりGDPが1,000ドルを上回り、その後も成長基調にあるベトナムは、ビジネス上の魅力が増している国のひとつであろう。しかしながら、ベトナム統計局によると、2010年における総人口が8,693万人であるのに対し、都市人口は2,622万人に過ぎず、69.8%に相当する6,070万人が農村地域に暮らしている農業国とも言える。各国の農村人口比率については、経済成長に伴う都市化との関連が見込まれるため単純な比較は難しいが、周辺国との比較を試みると、カンボジアの79.9%に比べて低いものの、その他の国々に比べると高くなっている(図表1)。

以上のような農村社会を基盤とするベトナムの特徴を踏まえ、本稿では、現地におけるアグリビジネス(※1)の事業展開を進める上での留意点として、農業協同組合(以下、「農協」という)について言及する。


図表1 ベトナム及び周辺国における農村人口比率(2010年)
図表1 ベトナム及び周辺国における農村人口比率(2010年)
出所:General Statistics Office of VietnamおよびFAOSTAT
注1)数値は推計値。
注2)四捨五入の関係で総人口は必ずしも農村人口と都市人口の合計値と一致しない。
注3) ミャンマーの人口統計については、出所によって相違が見られる。例えば、米国中央情報局(CIA)のウェブサイト “World Factbook”では2012年7月現在における同国の総人口は5,458万人と推計されている。本図表で示した2010年の4,796万人が2012年に5,458万人(対2010年比14%増)になるとは考えにくい。本図表では、農村人口比率を各国間で比較するため、ベトナムを除く各国については、FAOSTATの数値を用いた。


ベトナムに限られることではないが、開発途上国における事業展開を図る上で、現地パートナー選びは重要である。アグリビジネスの場合、個々の農家を対象とするのは非効率となるため、その候補として最も連想されやすいのは、農協であろう。ベトナムでは、協同組合はその種類によらず1996年に制定された「協同組合法」によって規定されている。全国で活動する各種の協同組合を傘下に置くベトナム協同組合連盟(Vietnam Cooperative Alliance)によれば、2008年の時点で8,553の農協が存在している(図表2)。


図表2 ベトナムにおける種類別の協同組合数(2008年)

図表2 ベトナムにおける種類別の協同組合数(2008年)

出所:Vietnam Cooperative Allianceより大和総研作成


ベトナムには、2005年末時点において町村レベルの地方行政組織が10,876存在(※2)することから、平均すると各町村レベルに農協が存在する計算となる。地域によって若干の相違はあるだろうが、アグリビジネス展開を図ろうとする地域において、農協を探すこと自体は比較的容易と思われる。


ただし、現在のベトナム農村には、ドイモイ以前に集団農業生産体制の下で組織化された「農業合作社」から転換した「転換型農協」と、1996年の協同組合法施行後に設立された「新設農協」が混在しており、このうち転換型農協は農民に対する情報提供や営農指導(※3)などを適切に対応できる幹部が少ないという問題が指摘されている(※4)。このような状況を鑑みると、現地の農協をビジネスパートナーとする場合には、日本で各地に見られる農協とは機能が異なることもあるため、どのような活動を行っているかを可能な限り確認することが望ましい。


他方、ベトナムの農協が抱える問題への対処として、国際協力機構(以下、「JICA」という)などの開発援助機関は、農協の機能強化を支援するプロジェクトを実施している。JICAのホームページでは、こうした取り組みのひとつとして、ベトナム北部における「農民組織機能強化計画」を通じた農協近代化を目指した支援事業が紹介されている(※5)。従って、現地の農協をアグリビジネスのパートナーとして位置付けられる可能性は以前に比べれば高まっていると言えよう。

2012年は国連により「国際協同組合年」(※6)とされている。ベトナムにおけるアグリビジネス展開に際しては、農協との連携を模索してみてはいかがだろうか。


(※1)ここでは、農業資材の販売事業、商品作物の調達事業などを想定。
(※2)財団法人福岡アジア都市研究所(2008)「東南アジア地域における自治体政府の国際政策に関する研究:福岡市における東南アジア都市連携政策のあり方に関する一考察」51頁。
(※3)作物の栽培に関する技術指導に加え、農家の農業経営全般への指導が含まれる。
(※4)岡江恭史(2007)「ベトナムの新設合作社とそのリーダーシップ:ハイズオン省における畜産合作社の事例より」『ベトナムの社会と文化7号』24-55頁。
(※5)JICAホームページを参照
(※6)第65回国連総会において決議(2009年12月18日)。


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