アジアンインサイト
ミャンマー国進出における人事・労務管理上の留意点

2012年7月5日

  • アジア事業コンサルティング部 芦田 栄一郎
2011年3月に誕生したミャンマーの新政権下では、新外国投資法をはじめとしたビジネス関連の法改正、外国為替制度などの金融・経済制度改革が急ピッチで進んでいる。その一環として、労働関連法規の見直しや整備も例外ではない。

ミャンマーは、約6,200万人の人口を有し、一般に安価で若い労働力が豊富であることが事業投資先の魅力の一つと言われている。確かにミャンマーの賃金は相対的に安価で、平均年齢は約27歳(2010年CIA推計)と若い。しかし、人事・労務管理上、課題や留意点も多く、ミャンマー進出を検討する場合には注意が必要である。本稿では雇用関連におけるリスクと留意点について整理する。


ミャンマー 人事・労務管理のリスクと留意点

1.労働ストライキのリスク
2011年10月の労働組合法改正により労働組合の活動や権利に関する規制が緩和され、それまで禁止されていた労働組合の結成やストライキの権利が認められるようになった。製造業ワーカーによるストライキの報道もあり、雇用管理の体制整備が求められる。

2.賃金上昇リスク
現在、ミャンマーにおける製造業一般ワーカーの月額基本給は平均68ドル(2012年JETRO調べ、図表参照)で、安価な労働力がミャンマーの魅力のひとつになっているが、賃金上昇のリスクがある。賃金上昇の背景には経済成長に伴う要因だけでなく、前述のストライキによる賃金水準の引き上げも懸念される。

図表:各国(各都市)の労働コスト比較:製造業(一般工職)の賃金
図表:各国(各都市)の労働コスト比較:製造業(一般工職)の賃金

3.人材流出のリスク
現在の職場よりも他社の賃金や処遇がよい場合には、自社で人材育成した社員がジョブホッピングしてしまうリスクがある。人材が流出すると新たな人材の採用コストや新規採用者のトレーニングコストなどの費用負担増に加え、ノウハウの流出も懸念されるため、企業としてのロスも大きい。人材流出の回避策として雇用契約書に「3年間は離職しない」というような条項が記載されている契約書を見かけるが、雇用を拘束することは、今後、規制対象になる可能性もあると筆者は考える。雇用契約書の作成には専門家と充分相談することをお勧めする。
特に優秀な管理職の人材は不足がちであるので、人材流出を防止するには、業界内の賃金水準や同一地域内の賃金水準の情報にも注意を払うことが肝要である。それに加えて、インセンティブプランなどのリテンション策も検討する必要があるであろう。

4.労働関連法規改正のリスク
2012年6月現在、公共機関の一部や国営企業の精米産業等を除いて最低賃金に関する規制がない。しかし、民間部門の雇用者の最低賃金と福利厚生を定める法案が2012年7月の議会で検討される予定である。
動きの速いミャンマーでは、これまで正しかった情報や法律が、大きく変更になることもある。労働関連法規改正の情報には常に留意されたい。

以上、民主化の進展に伴い事業投資先として注目されるミャンマーであるが、魅力やメリットのプラス面だけでなく、課題やリスクにも目を向け、対策を講じることが進出成功のカギを握ることになるであろう。


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