アジアンインサイト
タイにおける日本食レストランの動向

2011年12月28日

  • アジア事業調査部 圓 真耶子
タイ人は外食を好む国民であり、日々の食事を外で済ませることが多く、自炊はまれと言われる。外食が根付いているタイであるが、屋台、フードコートでの手軽な食事から、ショッピングモールでの少し贅沢な食事まで、その幅は広い。タイの飲食店の内訳をみると(※1)、客単価が20~40バーツ(※2)の小規模店舗が7割を占め、2割がファーストフード(同:50~120バーツ)、残り1割が、高級レストラン・国際フランチャイズ店舗(同:150バーツ以上)となっている。

以上のように大別される飲食店の中で、日本食は高級店に該当するが、タイで一定の地位を築いている。既に進出した外食企業によれば、タイでの日本食は「ブーム期」を過ぎ、「定着期」に移行しつつあるという。日本食がブームを迎えたのは、2000年前後と言われており、実際にタイで多く見かける人気ラーメン店「8番らーめん」の店舗数は、2000年以降急激に増加し、2011年現在で90店舗となっている。

図表1:「8番らーめん」の店舗数の推移

図表1:「8番らーめん」の店舗数の推移

出所:「8番らーめん」ホームページより、大和総研作成

ブーム期と比較すると、日本食人気にも変化が起きている。以前の日本食レストランでは、タイ人好みにアレンジしたもの(辛さを追加した味付け等)が主流であったが、最近では、日本のオリジナルの味を求めるタイ人が増えているという。

2005年に進出した「大戸屋」は、日本と同様の商品展開を図り、2011年には35店舗まで拡大させ、「大戸屋」ブランドを確立させた。タイ人経営のレストランにおいても、食材の9割を日本から調達する高級寿司店である「本物すし」、日本から人気ラーメン店を誘致した「らーめんチャンピオンズ」等、「日本の味」を追求する動きがみられる。

また、業態にも変化が見られる。これまで、定食、丼ぶり、ラーメン等を幅広く提供するバラエティ型のレストランが多かったタイの日本食レストランに、2000年代中盤以降、提供商品を特化した形態の外食チェーンが次々に進出している(図表2参照)。

図表2:タイの主な日本食チェーン店(※3)

図表2:タイの主な日本食チェーン店

出所:各社ホームページおよび報道より、大和総研作成

次に、客単価の面から代表的な日本食レストランを分類すると、図表3のようになる(※4)。客単価が20~40バーツの一般的なタイ小規模店舗と比較し、日本食は高価格帯に属するが、扱う商品やターゲット層によって、価格の幅も広いことがわかる。元祖らーめんチェーンの「8番らーめん」は、他の日本食店には珍しい50バーツ程度の低価格メニューも提供する。高級ショッピングモール サイアムパラゴン等に出店する「大戸屋」は、客単価を300バーツ程度に設定し、「ハレの食事」を提供することを念頭に置き差別化を図る。全体的には、100~200バーツでの提供が目立ち、この価格帯では競争が激化しているとみられる。

図表3:タイの日本食レストランの価格体系

図表3:タイの日本食レストランの価格体系

出所:各社ホームページおよび報道より、大和総研作成

一方で、2011年に出店した、懐石料理の「梅の花」は、客単価を1,000~1,500バーツ以上とし、より高価格帯の顧客向けの展開を計画している。今後は、こうした純日本的な和食に対する需要が高まってくるものとみられ、これまで進出がみられなかった天ぷら、うなぎ店等が参入する余地も出てくるだろう。これらの商品は技術面等でコストがかかり、高価格帯での提供となる可能性が高いが、高所得者層が増加する中で、こうしたセグメントの市場の成長余地は少なくないと思われる。

このように新たな成長局面を迎えたタイの日本食レストランだが、これから進出する企業にとっては、外資の出資規制という重要な問題が存在している。タイの外食産業においては、外国人事業法により、外資出資比率が49%に制限されている。そのため、図表2に示すとおり、日本の進出企業はタイ現地法人との合弁企業を設立している。提携先として多いのは、外食業、食品卸、流通大手の他、現地コンルティング会社、不動産業等である。

日本の外食産業の場合、創業者が強烈な個性とエネルギー、迅速な経営判断を強みにし、一代で急成長した企業が少なくない。このため、新たな土地に進出しようとする際には自らの成功体験を生かすために、経営権に拘る企業も多いと思われる。しかし、タイで成功した日本食チェーン企業によれば、食材調達、店舗の立地において、現地企業の協力が不可欠であるということだ。特に、これから新たなメニューで市場を開拓する企業にとっては、レストランの知名度を重視するタイ人に認知されることがチェーン展開を成功させる鍵となる。また、導入時点に限らず、進出後の運営・事業展開方針を提携企業と十分に共有しておくことが重要となるであろう。

(※1)JETRO『タイにおけるサービス産業基礎調査(2011)』
(※2)1バーツ=約2.6円(2011/12/27時点)
(※3)進出予定を含む
(※4)客単価は、各社ホームページ等を基に、大和総研推計


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