アジアンインサイト
最近の対外直接投資の動きから

2011年11月30日

  • アジア事業開発部 松島 光男
今年に入って、東日本大震災、福島原発事故、タイの洪水の発生等と、多くの日本の製造業にとって、その生産拠点の危機的状況を余儀なくされた。その結果、国内外に生産拠点の分散・移転を迫られた。財務省の国際収支統計から、今年1-9月の日本の対外直接投資の動向をみると、今年4月以降、対外投資は大幅に増加している。全体で昨年1-9月の2.3兆円から6.1兆円(数字はネットベース)と2.6倍に増えている。今年に入って、為替市場では円が米ドルに対し一段と強含みで推移しているので、ドルベースでは更に大きくなるだろう。

投資先別にみると、アジア向け1.8兆円、前年同期比1.7倍、北米0.5兆円、同1.4倍、欧州2.5兆円(内EU2.1兆円)、同4.5倍、中南米0.6兆円、同1.5倍という内訳である。欧州向けが著しく伸びているのは、円高・欧州通貨安の影響が多分にあろう。

表1 日本の対外直接投資

表1 日本の対外直接投資

出所:財務省 国際収支状況から大和総研作成) 数字はネットベース

アジア地域の国別の動きをみると、中国は0.7兆円、前年同期比1.6倍と平均的な伸びだが、インドネシア0.2兆円、同10倍、ベトナム0.12兆円、同4倍、韓国0.14兆円、同2.8倍とこれら3カ国への投資の伸びが際立つ。とりわけ今年4月以降の増加が目立っている。一方、表には紹介していないが、香港、シンガポール、タイ、インド向け投資はほぼ横ばいの動きである。

円高、電力不足懸念などから、国内の投資環境は決して良好とはいえず、日本企業はグローバルな企業間競争を勝ち抜くため、より良い投資環境を求め、生産拠点の海外シフトを強いられている。円高を積極的に利用した海外企業への大型M&Aも大いに貢献していると思われる。

中国への投資は依然底堅い。労働コストの上昇から輸出基地としての生産拠点の魅力は、失せつつあるが、販売競争は激しいものの、所得の上昇から巨大市場としての魅力はますます高まっている。ここもと中国の沿海部から内陸部へと日本企業の拠点が広がっている。“China+One”のもと、中国以外の進出先として、ASEAN(東南アジア諸国連合)への投資も前年比1.7倍と底堅く、ベトナム、インドネシアの2カ国の人気が高い。ベトナムは成長著しい国内市場はもとより、中国の広州、香港につながり、東西回廊の完成により、ASEAN諸国への戦略拠点として位置づけられる。一方、インドネシアは1人当たりGDP(国内総生産)が3000ドルを超え(ちなみにベトナムは1200ドル弱)、人口が2.3億人と巨大な国内市場が魅力である。インド系、イスラム系の人たちも多い。今後、軍事政権から民政移管が進むと思われるミャンマーも、中堅企業を中心に熱い視線が注がれつつある。

拠点シフトは製造業ばかりではない。少子高齢化が進む日本では、今後市場の縮小が避けられない。アジアの中・高所得層は今後10年間でほぼ倍増し、20億人近くになると見られる。ここもと小売、外食などの内需型産業のアジア進出ラッシュが続いているが、今後は人々の生活を豊かにする各種のサービス業の需要が高まるものと思われる。個人向け引越しサービス、子供向け語学教室、家庭向け警備サービス、音楽教室といった日本のサービス業者の展開が、今まさにアジア域内で開始されようとしている。日本国内で磨いたきめ細かいサービスを武器にアジアの内需を取り込む戦略である。


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