アジアンインサイト
中国男性ファッションにビジネスチャンスあり

2011年7月22日

  • 大和総研(上海)諮詢有限公司 野中 秀明
中国は、もはや「世界の工場」であると同時に「世界の消費大国」となった。例えば上海にあっては、ある程度の所得があれば、質・量両面で東京とほぼ同等の生活が送ることができる。市民の「よいものを購入したい」という意欲は極めて高く、“消費の渦”ともいえる状況であるが、この渦の中にあって一種の真空地帯のようなものを、上海で生活していて感じることがある。男性ファッションだ。単刀直入に言おう。男性のファッションが極めてダサイのだ。

弊社がオフィスを構える陸家嘴地区は、中国最大の金融地区であり、ここに集い働く人々は当然それなりの高い収入を得ているはずだが、ファッションはいただけない(服の色調が悪く、コーディネートもバラバラだ)。また、以前、ある市政府で要職を担う方とお会いする機会があったが、筆者の浪人予備校生時代のような格好で登場された。

一方、中国人女性の美の追求は、ますます深まりをみせている(もちろん個人差はあるが)。彼女たちは、女性向け雑誌を研究し、香港・台湾・韓国・日本のスター達の影響も多分に受けており、ファッションもメークも程良い華麗さがある。例えば若い上海人女性が、渋谷の人ごみの中を歩いていたとしても、一目で中国人と見分けるのは難しいのではないか。そうした女性と、よれよれのポロシャツや毛玉だらけのセーターに身を包んだ男性とが手をつないで街を歩いている姿を見かけると、一種もの哀しい気分にさせられる。

上海の有名百貨店はほぼ全て立ち寄ってみたが、どの百貨店にも必ずワンフロア紳士服売場が設けられており、その点日本の百貨店と変わらない。また、確認できただけでも、中国では20種類近くの男性向けファッション雑誌が出版されている。つまり、男性へ向けたファッションの提案は、至る所でなされている。

中国人男性はファッションに関心がないのであろうか?中国の週刊誌『紡織服装週刊』が中国人男性向けに行ったアンケート調査によれば、「1着の服を買うのにいくら使うか?」との問いに対し、「1500元以上」と回答した男性が最も多く64.5%、以下「500~1000元」が14.1%、「1000~1500元」が10.1%、「200-500元」が10.0%、「200元以下」ははわずか1.3%であった(1元=12~13円)。アンケート対象者が、ビジネススーツを想定して回答したのか、普段着を想定して回答したのか不明であるが、いずれにせよ、中国人男性もそれなりにファッションにおカネをかけているという印象を持つ。

他方、同アンケート調査によれば、「服を買う際に感じる問題は何か?」との問いに対し、「自分に似合う服が買えない」との回答が72.2%、「どうコーディネートすればよいのか分からない」との回答は69.1%までに達した。

以上をまとめると、中国人男性もファッションに関心は持っているものの、どのようにしてお洒落をすればよいか悩んでいるという現実が浮かび上がってくる。このギャップを埋めることで、中国のファッション業界においてビジネスチャンスを創出・拡大できないかと考える。

弊社は日本のアパレル業界の方から中国での事業展開について問い合わせを頂く機会が多い。そこで、以下3点に絞り、ビジネス上の工夫を紹介したい。

1.女性を巻き込め!

ある男性用化粧品のキャッチコピーに「男人不修边幅你爱不爱?」というのがある。「不修边幅」というのは身なりを気にしないという意味だ。つまり、このコピーは「身なりを気にしない男性をあなたは愛せますか?」と問いかけている。男性用化粧品のコピーを女性の問いかけにしている点がおもしろい。

いつの時代のいかなる場所でも、女性の美に対する意識は、男性の美に対する意識の上をいく(中国においてはその差があまりにも大きい)。であれば、女性が男性に対してよりよいファッションを身にまとうよう煽ったりアドバイスしたりする仕掛けをつくってみてはいかがであろうか。例えば、夫婦や恋人同士などカップル限定参加のファッションイベントを開催してみるのも一考に値しよう。女性から男性に「あの服は素敵。あなたも着てみれば。」と言わせればしめたものだ。

ちなみに、前述のアンケート調査では、「誰といっしょに服を買いにいくか」との問いに対し、「一人で行く」と回答した男性が実に67%を占めた。

2.身近なファッションリーダーをつくれ!

中国の男性ファッション誌を何冊か手にとってみたが、一流のモデルが一流のファッションを身にまとっている写真が多く、中国人男性にとっては、かなり敷居が高く感じられるのではないだろうか。そのような遠い存在ではなく、成功の途上にあるような男性(自分の身近にいるような少しハイセンスな男性)に、自分のファッショへのこだわりを語ってもらい、そのこだわりをもってチョイスした服をファッション誌等に掲載してみてはいかがであろうか。日本でいえば、ちょうど読モ(読者モデル)のような仕掛けである。

3.個性を尊重した提案をせよ!

以前、テレビでサッカーの三浦知良選手が高級ジャケットを何着も試着する映像が流れたことがあった。彼の生き様を知っている我々にとっては共感できる光景であるし、一方、作家の椎名誠さんのジーンズ姿も、彼の作風やライフスタイルとピタリ符号し好感が持てる。有名ブランドの服を着ることだけがファッションではない。ファッションとは、自分の思考や生活、つまり自身の個性と適合するものを身につければよいはずだ。

筆者は何度か上海で衣服を購入したことがあるが、日本の店員のような客との会話の中からファッションを提案するというキメの細やかさは感じられなかった。再度、上述のアンケート調査をみると、「服を買う際に感じる問題は何か?」との問いに対し、「店員がプロとしての対応をしてくれない」と回答した男性が52.8%を占めた。洋服店の店員は、服に関する十分な知識を身につけることはもちろん、客との会話の中から客の個性を紡ぎだし、その個性に合ったファッションを推奨できるような提案力を身につけるべきである。

冒頭述べた通り、上海は既にモノが溢れかえっており、一見すると新たなビジネスの開拓余地は限られているようにも感じられるかもしれない。しかし、人間の営みの基本である衣食住(この場合は衣)の分野で、まだまだ大きなビジネスチャンスが潜在していると思えてならない。

中国の男性向け雑誌
中国の男性向け雑誌



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