アジアンインサイト
上海で見た豪遊する人々

2011年5月10日

  • アジア事業調査部 杉下 亮太
今年の年初まで上海で2年弱を過ごしたのだが、上海生活で最も印象に残ったのは、私から見れば豪遊と思えるお金の使い方をする人が予想以上に多かった点だった。最初の体験は、上海に赴任して間もない頃のことである。台湾人の友人に誘われてバーにいった。それは20人ほどの上海人・香港人・台湾人のグループであった。バーではモエエシャンドンのボトルが数時間にわたって絶え間なく注文された。正確にはわからないが、少なくとも40本は空いたと思う。1本1,000元(約12,600円)はするので、会の主催者はシャンパンに日本円で50万円以上を使ったはずである。80年代後半の東京ではきっと珍しくなかったのだろうが、私にとっては初めて目にする豪遊の光景だった。

その後、上海人の誕生会に参加する機会が何度かあった。日本の習慣と違って、祝われる人が奢るのが普通なので、誘われるこちらはご馳走になるばかりなのだが、やはり1本1,000元のウィスキーが4-5本にワインとシャンパンがテーブルの上に並ぶ。私が参加した誕生会はいずれもクラブ(ディスコ)のVIPルームであったので、このほかに室料がかかる。週末のVIPルームの室料は高く、5,000元くらいするとのことだった。つまり誕生会の主役は10万円以上の出費をしているということだ。

このほかにも以前から親しくしていた上海人の友人と月に2度ほどのペースでバーやクラブに通っていた。毎回5-10人の集まりだったが、みなそろって酒豪であったため、シャンパンにウォッカにウィスキーとボトルが次々に空いていった。こちらはより親しい友人同士ということで割り勘に近いスタイルだったので、各々(ただし男性)が交代でボトルをいれていく。やはり1本1,000元前後という値段である。

以上は現在の平均的な日本人にとっていずれもバブルという言葉が思い浮かぶ出来事ではないだろうか。これらはあくまで私がたまたま遭遇した個人的な体験にすぎず、上海で一般的というわけではないのはもちろん承知している。しかし、富裕層ならばともかく、私が交流した人々のほとんどは中の上の所得階層だったはずで、日本の中間層とほぼ同程度の所得水準と思われた。現在の日本で彼らと同じくらいの所得水準の場合、普通はこのような消費行動にならないのではないか。少なくとも私の同世代の友人にはいない。

どうしてこれほど太っ腹になれるのか、人によって理由は異なるであろうし、一概にいえない部分もあるのだが、私見では3つの要因に大別されるように思う。第一に、一時的にせよ、私たちが推定している以上に金銭的な余裕を持つ可能性である。たとえば、人によっては給与所得以外に副収入があり、見かけ以上に所得が多くなる場合がある。また、上海は中国の中でも物価が高いところだが、それでも食費や交通費、携帯電話通話料など普段の生活費を安く抑えることができるので、普段を質素に生活すれば、必要なときに大きく使うという消費パターンが可能となる。既婚であれば共働きであることが多いので、世帯収入が多く、その分消費できるという点も指摘できるかもしれない。さらに、近年は不動産価格の上昇が続いたので、取得時の数倍の値段で売却して多額の現金を持ったという人もいる。

第二の要因は、右肩上がりの経済とインフレ高進という環境である。周知の通り中国では経済高成長が続いており、上海の多くの企業において毎年ベースアップが行なわれている。また、2010年からはインフレ率が高くなっており、銀行預金を増やしても減価してしまうので、消費に多くを回す方がよいと人々が考える傾向も指摘できるだろう。

そして最後の要因は、他人からケチと思われたくないという面子である。日本でも同様の面子はある。ただ、その程度が大きいため、日本人から見ると豪遊しているように見えることがあるのだと思う。


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