アジアンインサイト
中国の高速鉄道時代

2011年4月11日

  • 大和総研(上海)諮詢有限公司 張暁光
いま、世界の高速鉄道地図は、中国によって急速に塗り替えられようとされている。

2007年に放送されたNHKの「関口知宏の中国鉄道大紀行」というテレビ番組をご覧になった方も多いと思う。その映像からも窺い知れるように、当時の中国では、近代的な高速鉄道は皆無の状態であり平均100 km/h程度の在来線が中心であった。

しかし、その放送のわずか1年後、つまり2008年8月の北京五輪開幕の直前には、中国初の近代高速鉄道である京津鉄道(北京‐天津間/全長120キロ)が開通され、その運行速度は当時の世界最高の350 km/hであった。その後さらに、2009年から2010年にかけて、矢継ぎ早に、鄭西高速鉄道(鄭州-西安間/全長457キロ)、武広高速鉄道(武漢-広州間/全長1069キロ)、寧高速鉄道(上海-南京間/全長300キロ)、杭高速鉄道(上海-杭州間/全長168キロ)が開通された。更に2011年6月に開通が迫っている京滬(キョウグ)高速鉄道(北京-上海間)は、京津鉄道の世界最高速度を上回り(380 km/h)、かつ、高速鉄道としては世界最長(全長1318キロ)となる。2011年1月頃、中国全土の高速鉄道の総開通距離は8,358キロとなっている。中国は、高速鉄道事業分野において、先進国との間にあった40年間分ものギャップをわずか5年という短期間で埋めてしまったことになる。

かような中国の高速鉄道事業の驚くほどの発展の理由として、大きく以下2点が考えられる。

1.後発効果の最大限の活用
中国の高速鉄道開発は、海外技術の導入⇒中国カスタマイズ⇒バージョンアップというプロセスで行われた。つまり、フランスのAlstom社、日本の川崎重工社、ドイツの Siemens社、カナダのBombardier社などとパートナーシップを結成し、それぞれの長所・短所を勘案しながら、中国の実情に合わせた開発を行った。そして、海外から導入した200~250 km/hの鉄道技術をベースにしつつ、そこに中国独自の開発を加えたことで、350~380 km/hの中国バージョン(CRH380A)の鉄道開発に成功したのである。

2.政府主導による強力な推進力
2004年、中国鉄道部が「四横四縦高速鉄道」を柱とする「中長期鉄道網計画(08年修正)」を発表して以降、中央政府を中心に巨大な産官学連携部隊が結成され、潤沢な資金力をバックに、総力戦で鉄道開発に取り組んできた。その結果、技術確保と技術開発期間が短縮されたのみならず、広大な地域に跨るインフラ開発も中央政府・各地方政府が足並みを揃えて実施され、予定工期の大幅短縮も果たした(武広高速鉄道は5ヶ月早く、京滬高速鉄道は6ヵ月早く完工予定)。

ただ、この行政主導・スピード優先の開発方式は、実務上マイナスの面をもたらしてきたことも否定できない。プロジェクト受注に絡んだ汚職問題、ハードと比較したソフト面の貧弱感、コスト無視による不良債権懸念問題などが最近しばしば指摘されている。この意味で、中国は約半世紀の高速鉄道運行の実績をもつ日本に学ぶべきところが少なくないであろう。

一方、中国高速鉄道の海外展開の動向が最近注目されている。

2010年12月、第7回世界高速鉄道大会が、国際鉄道連合と中国鉄道部との共催で、北京において開催された(同大会が欧州以外の国で開催されたのは初めてのことである)。その場において、中国・タイ・ラオスを結ぶ高速鉄道を建設する計画が発表されている。更には、中国昆明とミャンマーのヤンゴンを結ぶ全長1,920キロの鉄道建設計画が報道され、2011年2月には、中国・カザフスタン両国政府間の協議により、カザフスタンが中国の高速鉄道を導入することで合意が為された。今後は、アジア横断鉄道計画の推進によって、中国乃至周辺諸国との政治・経済関係も変化していくものと予想される。

四横四縦計画概要


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