アジアンインサイト
高成長期待される中国のスポーツ用品市場

2010年12月9日

  • 大和総研(上海)諮詢有限公司 趙菁
中国経済の高成長に伴って、スポーツ用品市場も急成長している。特に2000年以降は二桁成長が続いており、2010年に市場規模は100億ドルを超えたと推定される。このように市場規模は世界的に見て相当大きくなったといえるが、他方で対GDP比では0.3%相当にすぎない。米国や日本、ドイツといった先進国のスポーツ用品市場はGDP比1~3%にあることを考えると、中国のスポーツ用品市場にはまだ大きな成長余地が残されている。

中国のスポーツ用品市場拡大の大きな要因として、スポーツのプロ化やスター選手の登場が指摘できる。中国では1993年にサッカーのプロリーグが創設されたのを皮切りに、バスケットボールやバレーボール、卓球などプロリーグ誕生が相次いだ。また、NBA(バスケットボール)で活躍する姚明や、女子テニスの李娜(世界ランキング11位)、110mハードルでアテネオリンピック金メダルの劉翔、女子飛び込みでアテネ・北京オリンピックで金メダルを獲得した郭晶晶といったスター選手が誕生したことも中国のスポーツ用品市場拡大に大きく寄与したはずである。

市場成長の第二の要因としては、健康志向の高まりが挙げられる。スポーツは健康維持に大きな効果を持つだけでなく、仕事上や生活上で生じる様々なストレスを軽減し、精神をリラックスさせる効用があると認識されるようになってきた。また、こうした健康志向の潮流を後押しするように中国政府もスポーツの大きく奨励するようになっている。例えば、1995年に本格的な国民の体力と健康水準を高めることを目的とした「全国民健康計画」が公表され、同時に「中華人民共和国体育法」が制定された。2002年には国家体育総局が北京オリンピックを見据え「2001-2010年奥運争光計画綱要(オリンピックメダル獲得計画)」を公布している。実際、北京オリンピックで中国は合計100個のメダルを獲得しており(バルセロナ~アテネ大会までは50~63個)、2001-2010年奥運争光計画綱要は大きな成果をあげている。そしてそれだけではなく、競技スポーツに対する投資体系の整備や、競技スポーツ事業への参画を各界に求めていたことが、スポーツ施設の急増につながった側面もある。特に、卓球やバドミントン、バスケットボールなど、造営が容易な施設は普及が加速している。今後は、所得水準の向上にともなって、ゴルフやスキー、アウトドア、乗馬など、相対的に費用のかかるスポーツでも競技人口が大きく伸びることが見込まれる。

以上のように今後も中国のスポーツ用品市場は高成長が期待できるが、他方で中国でのスポーツ用品の生産については、まだ少なからぬ課題が残されている。中国には数万社に及ぶスポーツ用品メーカーが存在するといわれ、いまや世界のスポーツ用品の約3分の2が中国生産とされるものの、多くは単純加工のレベルにとどまり、中国企業が独自に開発したものは限定的な状況だ。中国国内で急成長を遂げたブランドもいくつかあるが、いずれもまだローエンドからミッドレンジのスポーツウエアとスポーツシューズの生産が中心で、ハイエンド市場は海外ブランドが圧倒しているのが現状である。もちろん、ゴルフクラブやスキー用品といった高い技術水準を求められる分野でも、国内ブランドは決して存在感があるとはいえない。

中国には模倣品という厄介な問題があるが、中国国内ブランドは高品質・高価格の海外ブランドと低価格の模倣品に挟まれる格好で、研究開発や中国国内におけるブランド力構築に一段と注力することが大きな課題である。日本企業からの技術提供は中国ブランドメーカーにとっても大きな魅力であるはずで、技術供与を前提とした提携ニーズは基本的に旺盛だろう。日本企業が中国スポーツ用品市場拡大の恩恵を受けるには、技術供与を前提とした提携関係の構築が最も早道といえるのではないか。


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