アジアンインサイト
フィリピンで進む女性管理職の活用

2010年12月7日

  • アジア事業開発部 岩崎 靖
世界で女性管理職を活用する動きが進んでいる。中でも、フィリピンは積極的な女性活用で有名だ。背景にはそれが自国の国力の向上につながるとの考えがあるのだが、実際フィリピンの管理職に占める女性の割合は57.9%とILO(国際労働機関)が公表しているデータ中でトップである。これに対し日本は10.1%に過ぎず、フランス、韓国についで低い有様だ。一方で全体の就業者数に占める女性の割合は、フィリピン38.5%に比べて日本が41.4%とほとんど差がない。日本はフィリピンに比べ、女性の管理職登用への道が大きく狭められているといえる。

図表:就業者および管理的職業従事者に占める女性の割合

ところで、女性管理職活用が積極的な企業ほど業績が高くなるとの調査報告もある。例えばROE(株主資本利益率)に与える効果に関して、アメリカのFortune500社の状況をみると、女性管理職を活用している上位25%の企業の平均値は17.7%と下位25%の企業の13.1%を上回っている(※1)。また、日本の「CSR企業総覧」のデータ (※2)でも、ROEの高い企業ほど女性管理職比率および女性部長職比率が高いなど、同様の傾向がうかがえる。企業業績の向上には女性の管理職比率をあげることが、近道と言うことなのかもしれない。

図表:ROE階層別の女性管理職比率等

売上高1000億円以上の企業

ROE(%) 全体 マイナス 0~5未満 5~10未満 10以上
女性管理職比率(%) 2.53 3.21 2.09 2.38 2.68
女性部長比率(%) 0.91 1.24 0.68 0.80 1.07

売上高100~1000億円未満の企業

ROE(%) 全体 マイナス 0~5未満 5~10未満 10以上
女性管理職比率(%) 3.74 5.56 2.64 3.28 3.88
女性部長比率(%) 1.68 2.89 1.45 1.00 1.31
(注)ROEマイナス企業の管理職比率、部長比率が高いのは、比率が50%を超えている企業6社のうち、3社がマイナスであることによる平均値の押し上げが要因。
(出所)東洋経済「CSR企業総覧」データとアンケートデータをDIRが加工

さて、フィリピンはどのようにして女性管理職比率を向上させたのであろうか。フィリピンで相対的に女性管理職比率が高い理由には、制度的・社会的背景の双方を指摘することができる。

制度的背景としては、1986年アキノ氏が女性で初めての大統領に就任してからさまざまな制度改革が実施されている。フィリピン共和国憲法改正において「国家建設における女性の役割」を認め、議員の一定割合が女性になるようにコントロールすることとなった。これにより政治における女性比率を上げた。

一方社会的背景として、フィリピン女性が労働力として社会参加し続けてきたことがあげられる。メイドなどの家事労働や工場での労働だけでなく、農業、漁業にも進出している。また海外出稼ぎ労働者も中心は女性である。このことがフィリピン女性の発言力を高め、民間企業でも管理職比率をあげたといえる。

日本においてフィリピンのように女性首相が誕生するのはかなり先になろう。しかし日本でも北海道、千葉県、横浜市など自治体の首長が女性になるケースが増えている。そのような自治体が率先して女性管理職を活用する流れは、確実に高まろう。また「特定非営利活動法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク」が設立された。同法人は、経営戦略の観点から企業の女性活用の促進を支援しており、88社の企業がメンバーに入っている。このような活動を通じても、女性の社会参加は着実に進むことが期待されよう。

(※1)NPOカタリスト
(※2)東洋経済CSRデータに見るROEと女性リーダー比率の関係

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