アジアンインサイト
上海のマンション価格は許容されうるか ~香港との比較雑感~

2010年11月30日

  • アジア事業開発部 吉田 仁
先日、香港と上海を訪問した際に、現地で不動産物件を見分する機会を得た。そこで筆者が個人的に感じたことは、(1)香港は繁華街を離れても高層マンションが連なっている。ただし価格は相当高い上に広くない、(2)上海は、平均的な給与水準から見て東京よりもマンション購入価格は割高。しかし香港よりは購入しやすい、ということである。以下ではそう考えるに至った理由等について解説したい。

まず、各所の不動産(マンション)について、実際に単価(円/m2)を計算し、現地の給与水準と比較したのが以下の表である。

各所の不動産(マンション)について、実際に単価(円/平方メートル)を計算し、現地の給与水準と比較した

香港は周知のように、特別行政区自体の面積が小さい上に、山が多く不動産の開発面積は非常に限られている。そのため、都心から1時間弱離れていても、高層マンションが乱立している状況である。そのうち1つの新築マンションを実地見分してみたが、高価格な上に決して広くないことに改めて驚かされた。例えば、物件(1)は都心から1時間弱とやや離れたところにあるが、それでも70m2・3LDKで7,000万円弱と高価格である。39階に位置し、部屋からは湖(海水なので正確には海)が一望できるなど眺望は最高なのだが、如何せん価格が高すぎる。ちなみに同一マンションで眺望を犠牲にした物件(2)に関しては、価格は4割弱ほど抑えられる。しかしこれでも東京のベッドタウンと比べるとなお割高感があることに変わりない。例えば、日本の物件(7)は東京駅まで40分という立地だが、単価(円/m2)は物件(2)よりも安く、50万円/m2台である。特に単価を平均月収と比べると、その差は歴然となる。東京の物件(7)が1.4ヶ月分であるのに対して、香港の物件(2)は5.7ヶ月分に達している。香港の平均月収は賞与を含まず単純に東京と比較できないが、日本よりも賞与のウエイトが大きくないと言われることを調整(賞与込みの平均月収を33%増:賞与は年2回2ヶ月分ずつの15万円と仮定)しても、香港の物件(2)は4.3ヶ月分とかなり高水準である。

上海の高価格物件の例として取り上げたのは物件(3)である。これは上海環球金融中心(日本の大手町のような一等地)から徒歩圏という超一等地に立地する物件で、価格は日本円換算で2億円強である。金額だけをみれば非常に高額だが、面積は200m2強と広く、バストイレも2セットあり、単価に直して100万円/m2強である。これは超一等地であるにもかかわらず、香港のベッドタウンの高層マンション(物件(1))と同程度の単価という計算だ。購買層は超富裕層に限定されると見られ、これは他都市と比べて決して高すぎる水準というものではないだろう。

ところで不動産価格高騰が社会問題化しているとされる上海で、果たして一般庶民はマンションを購入する困難さはどの程度なのだろうか。物件(4)はメトロ(地鉄9号線)の終点近くで、都心まで1時間半の距離にあり、単価は12.1万円/m2と平均月収の2.3ヶ月分である。東京の物件(7)が東京駅まで40分の距離にありながら、単価が平均月収の1.4ヶ月分であることと比べると、上海の物件は確かに割高感があるだろう。しかし、香港の物件(2)の5.7ヶ月分と比べればまだその水準は高くなく、香港人の感覚からすれば許容できる価格水準といえるのではないか。

また、仮に上海まで新幹線通勤が許されるのであれば(※1)、物件(5)も視野に入るかもしれない。上海駅から和諧号で1駅(約20分)の昆山南駅、そこからさらにバスで25分のところにある物件だ。都心までの通勤時間は1時間半かかるが、単価は平均月収の1.5ヵ月分まで抑えることが可能である。ただし、東京の物件(7)と比べてなお高く、しかもかなり郊外に離れた当該物件だけに、現状で上海人が「マンションが買えない」と不満を抱くのは無理からぬところか。ただし、このままマンション価格が高水準の状況が長く続き、その意識が香港人に近付いていけば、不満は自然に収まり、こうした郊外物件の購入が常態化する可能性もあろう。

(※1)ちなみに和諧号の料金は片道約300円である。月20日の勤務で合計12,000円と上海月収平均の2割強の交通費がかかる計算となり、現状で通勤利用するのには大きな負担といえる。


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