アジアンインサイト
中国の太陽光発電・太陽電池市場

2010年11月22日

  • アジア事業開発部 高橋 海媛
世界的な太陽光発電ブーム、太陽電池市場拡大の流れを背景に、中国国内における太陽電池生産量が拡大している。特に拡大が顕著になったのは2006年頃からで、数年で一気に世界一の生産量を誇るまでに急成長している。2009年度における中国の太陽電池生産量は4,100MWと、世界の太陽電池総生産量の4割近くを占め、3年連続で世界一となっている(日本1,500MW、欧州2,000MW)。もっとも急速な成長故か、次のような課題も指摘されており、中国が名実共に太陽光発電大国になるには、今暫くの時間が必要なようだ。

課題の第一は、生産原料調達や販売先の海外依存が大きい点である(中国では「二頭在外」と呼ばれる)。中国では太陽電池製造に必要な原料シリコンの生産コア技術がまだ海外に追いついておらず、原料シリコンは海外主要メーカーからの輸入に依存している。加えて、太陽電池の需要先としての国内市場も国内生産量を消化できるほど大きくない。実際、2009年度の太陽電池生産量4,100MWのうち、国内で利用されたのは僅か4%程度に過ぎず、生産された製品の9割以上は海外に輸出されている。中国国内の太陽光発電量は、2009年までの累計目標値300MWを達成済みとされるが、国内での太陽光発電の拡大は政策的な課題ともいえるだろう。

そして太陽電池生産に企業の過剰参入が目立つ点も見逃せない。特に技術や資金負担面でハードルが低いパネル組立分野に新規参入が集中し、競争が激化している。さらに、太陽電池市場の拡大を見込んで、シリコン生産・加工分野への参入企業も増加している。高い技術力を誇る海外シリコンメーカーの生産拡大が続く中で、生産コストと品質面で競争力の低い中国国内企業の新規参入が加熱しており、近い将来、競争力の劣る企業の淘汰、集約が避けられない情勢だ。

以上に対して、昨年より国内市場拡大に向けて中国政府が各種の施策を相次いで講じている点は注目に値しよう。例えば、2009年3月に発表された「建築一体型太陽光発電システム導入ガイドライン」は、要件を満たす太陽電池パネルを設置する建物に対して、発電容量に応じて補助金20元または15元/1kWhを補助するというものだ。同年中に400~600MWの申請があり、うち約100MWに対して補助が実施されている。続いて、2009年7月に財政部、科学技術部、国家能源局が共同で公布した「金太陽モデルプロジェクトの実施に関する財政補助資金管理弁法」もある。これは、国内太陽電池産業の育成、大規模化を図るため、太陽光発電事業への補助金支給等を開始するもので、数年内に600MWの太陽光発電モデル事業について、設置費用の50~70%が助成される。政府は既に、314プロジェクト、総計643MWについて承認を出し、具体化な事業実施も進んでいる模様である。

以上に代表される政策措置は、中国国内の太陽光発電市場の拡大・促進に一定の効果があることは確かだろう。しかし、太陽光発電の普及に成功している諸外国の例から考えて、市場拡大に最も有効な方法は、「フィード・イン・タリフ(固定価格買取制度)」すなわち電力会社等に太陽光で発電された電気を全て一定価格で買い取ることを義務付ける制度の導入だろう。中国では風力発電での導入が実現を見ているが、太陽光分野での導入は時期を含めて未だその姿ははっきりしないままだ。ただ、一部のモデル事業で制度の試験的な導入、試行錯誤が重ねられており、早晩、全面的な導入が実現するとの見方も根強い。

フィード・イン・タリフ制度の導入に併せ、今後、注目すべきは建築一体型太陽光発電システムの市場拡大だろう。都市化の加速が進む中国で太陽光発電を普及させるには、建築物との一体化が最も効果ある現実的な施策と考えられることによる。太陽電池分野で中国企業と激しい競争を繰り広げる日本企業にとっても、十分に有望なマーケットであることが期待されよう。


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