ラオス:証券取引所開設により期待される長期的な経済成長

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ラオスはインドシナ半島の内陸部に位置しており、中国(雲南省)、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーと国境を接している。国土24万km2、人口約630万人と、ASEAN諸国の中では比較的小規模な国家である。ラオスの2009年の1人あたり所得は886ドル。ASEAN10ヵ国の中ではベトナム、カンボジア、ミャンマーとほぼ同じ水準にあり、国連で最貧国(Least Developed Countries)と定める48ヵ国の内の1つである。


しかし、人口やGDPの規模では他のASEAN諸国に及ばないものの、ラオスの経済成長のスピードは速い。1999年から2009年の間、ラオスは11年連続5%以上の成長を遂げており、直近10年間の実質GDP成長率(年率平均)は7.8%と、ASEAN諸国の中ではカンボジア(9.2%)に次ぐ2番目の高さである。また、この間の世界全体の成長率(3.6%)や新興国全体の成長率(6.0%)に比べても、ラオスの経済成長率は高いことが窺える。

そのラオスで、2010年10月10日に証券取引所(Lao Securities Exchange:LSX)が開設した。取引所開設時点ではまだ上場会社はないが、ラオス証券取引委員会(Lao Securities and Exchange Commission)は、「ラオス証券取引所での最初の売買は2011年1月11日を予定している。上場第1弾は2-3社で、金融、エネルギー、製造業の企業であろう。」と述べている。

証券取引所が開設したことで、長期的にラオス経済が成長し、所得水準が向上すると予想される。これまでラオスでは、株式市場はおろか債券市場も整備されていなかったため、株式や社債の発行による資金調達が厳しく、企業は銀行借入に依存していた。しかし、証券取引所の開設により、企業は資金調達の選択肢が広がり、長期的な投資資金の確保ができるようになる。

資本市場の発展度と所得水準の関係を、ASEAN諸国、日本、米国、オーストラリア、中国及びインドを例に調べてみると、銀行借入、社債残高、株式時価総額を合わせた資本市場の規模が名目GDPに対して大きい国ほど、所得水準が高い傾向にあることが分かる。銀行借入に頼るラオスは、まだ名目GDPに比べた資本市場の規模は20%程度しかない。隣国のベトナムは、2000年の証券取引センターの開設から10年弱で、株式時価総額は名目GDPの30%程度を占めるまでに成長している。ラオスも同様のペースで資本市場が発展すると仮定すると、2020年迄にラオスの1人あたり所得は2,000ドルを上回る可能性もあろう。



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